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「君の二重人格の話だ」
赤井さんの声に、俺は何かがバラバラと崩壊していく音が聞こえた気がした。
慌てて当たりを見回すが、当然、壊れているものなどない。
おかしいな……じゃあ、何が壊れたというのだろう。
「あ、FBIの新しい任務が増えて忙しくなりそうとか？ 今度こそあたりでしょ？」
話をそらさなくては。
「……A」
壊れてないと、証明しなくては。
「他は…えっと……なんだろ…えーっと」
「A、もういい。話をそらすな」
「大丈夫すよ。ちゃんと、当ててみせますって。他には…何があるかなあ……あ、もしかして父さんのボツ原稿を偶然見つけたとか？」
「A、もういいと言っているだろ」
ああ、それから。それから。
必死で頭をフル回転する。何か言わなくては。関係ないことを。これ以上、赤井さんが踏み込んでこないように。
壊したくない。壊したくない。
「これも違うの？ もう思いつかねーよ……えー、あ、新しいメニュー考えたとか？ あ、これさっき言ったかな…」
壊さないでくれ。
頼むから。
「もういい、何も喋るな」
赤井さんの大きな手が、俺の唇をふさいだ。
その手が、驚くほど震えている。緑色の目が歪んで、その奥に俺がうつっている。
怯え切った顔に、必死に作り笑いを浮かべる俺の姿が。
「いやだ……」
「A、聞いてくれ」
「いやだ……いやだ…」
「君の書いた日記を見つけた。それだけじゃない。ついさっき、君がこの家に帰ってくるほんの数分前、ある "告白文" も発見した……君が書いたものだ」
俺は赤井さんの手をどけようとしたが、もう片方の手で俺の動きは封じられる。体重をかけられてソファに押し付けられ、痛みは感じないのに動くことができない。
「君の部屋に無断で入ったことを謝るよ……あとで殴るなりなんなりしてくれて構わない。
しかしその "告白文" の内容が本当だと仮定したとき、俺には全ての謎が解けた」
だめだ。
壊れる。
「君が、何者なのか。……いや、何者だったのか」
やっと手に入れた、人並みの幸せも。
壊れる。
今度は、俺のせいで、壊れていく。
「君の本当の名前は、真嶋光」
「ちがう。俺の名前は………」
「十八の夏、殺された」
「ちがうちがう………っ俺は」
「君には、前世の記憶がある」
「違うって言ってるだろ！！！！」
嗚咽まじりの怒鳴り声が、屋敷内に響き渡った。
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やっち(プロフ) - 凄くいいお話でした。ありがとうございます (2022年9月11日 12時) (
レス) @page50 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
アラバ - もう……なんかもう…………………やばかったですほんとに…………このお話思いついて、それを文章に現せるのが尊敬です………………もうなんか、やりきれない思いとか、最後までぐっっと涙をこらえていないと見れない作品でした……………小説、お疲れ様でした(泣)！！ (2021年5月16日 1時) (レス) id: bed3b6d329 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 凄く泣けました!赤井さんや降谷さんとの絡みもとても素晴らしく主人公の設定もちゃんとしていて、なんかこう!言葉に表せないぐらい感動しました！！！！！！ (2021年5月6日 12時) (レス) id: 8b38c910a7 (このIDを非表示/違反報告)
寝子(プロフ) - やはり神作品…何度読んでも泣いてしまうんです。責任とってください…！（謎） (2020年10月10日 7時) (レス) id: 7be43a5c44 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんでライム(プロフ) - めちゃくちゃに泣きました。二次創作ものでここまで感動したのは久しぶりです。一つの作品としてめちゃくちゃ楽しめました。作者様、ありがとうございました。 (2020年7月7日 23時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年11月4日 14時
