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屋敷の重い扉を開ける。
冷たい外気に晒されていた体に、温かい空気が安心感をそそる。
家に帰ってきたんだな、と思った。
ずいぶん長い一日だった。
靴を脱ぎ、リビングから漏れ出た橙色の優しい光に、無性に懐かしさを覚える。
ああ、やっぱりここは、俺の我が家なんだな。
今更ながら、そんなことに気がついた。
友達を連れてくるたび、ホテルみたいでよそよそしい家だ、と言われたものだけど、俺にとっちゃ世界で唯一の帰る場所なわけで。
ちょっとした壁のしみとか、靴棚の傷とか。
歩くたび、かすかにきしむフローリングの床の古さとか。
「ただいま、戻りました」
リビングのドアは開かれていた。
俺は温かい空気を存分に感じながら、そう大きな声で叫んだ。
ソファに背をむけて座っていた長身の男が、ゆっくりとこちら振り向いた。
「おかえり、A」
「ただいま」
俺はもう一度赤井さんにそう告げる。
「遅くなって、すみません」
「……気にするな」
赤井さんは黙って立ち上がると、俺を促すようにそっと背中を押した。
そのまま誘導されるようにソファに座る。
赤井さんは俺の横に腰掛けた。
しかし赤井さんは何も言わない。眉をひそめ、俺のほうは見ずに、煙草に火をつけた。
くゆる紫煙をぼんやり見つめている。
「話があるそうですね」
俺はつとめて平静な声で、そう切り出した。
「何の話かな？」
煙草の煙のにおいが、鼻につく。
赤井さんの眉と眉の間に刻まれたシワが、いっそう深くなる。
「あ、クリスマスプレゼントの話ですか？」
「…………」
「それはさすがに気が早いっすよねえ。あ、もしかしてもう同居をやめたいとか？ でもそれだとすげえ寂しくなっちゃうな」
赤井さんが煙草をもみ消した。
まだ、吸える部分は長く残っているのに。
「あとは、なんだろ？ あ、料理のメニューで、新作が追加されたとか？
それとも、アガサ博士に言われて子供たちのキャンプに付き合わされることになったとか？ 俺もこの前声かけられそうになって……小学生のお守りはさすがにキツいっすよねえ」
「A………」
「そうだ、分かった。またコナンくんと何か秘密の作戦でも企ててるんすね？ 俺をまた巻き込もうと……」
「君の二重人格の話だ」
赤井さんが、唐突に俺の無駄話を遮った。
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やっち(プロフ) - 凄くいいお話でした。ありがとうございます (2022年9月11日 12時) (
レス) @page50 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
アラバ - もう……なんかもう…………………やばかったですほんとに…………このお話思いついて、それを文章に現せるのが尊敬です………………もうなんか、やりきれない思いとか、最後までぐっっと涙をこらえていないと見れない作品でした……………小説、お疲れ様でした(泣)！！ (2021年5月16日 1時) (レス) id: bed3b6d329 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 凄く泣けました!赤井さんや降谷さんとの絡みもとても素晴らしく主人公の設定もちゃんとしていて、なんかこう!言葉に表せないぐらい感動しました！！！！！！ (2021年5月6日 12時) (レス) id: 8b38c910a7 (このIDを非表示/違反報告)
寝子(プロフ) - やはり神作品…何度読んでも泣いてしまうんです。責任とってください…！（謎） (2020年10月10日 7時) (レス) id: 7be43a5c44 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんでライム(プロフ) - めちゃくちゃに泣きました。二次創作ものでここまで感動したのは久しぶりです。一つの作品としてめちゃくちゃ楽しめました。作者様、ありがとうございました。 (2020年7月7日 23時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年11月4日 14時
