prologue ページ2
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顔をこする。
ごしごしと袖でこする。ひどい臭いがした。当然だ。もう一か月近く、お風呂もシャワーもしてないんだから。
ぐらぐら揺れる頭の中で、ぼんやりと考える。
自分の手についた、赤い、赤い……血の跡。
顔がひどく痛む。
きっと殴られたあとが腫れているのだろう。
よろよろと立ち上がると、怒号が聞こえて腹を思いっきり蹴り飛ばされる。
胃の中が逆流して、喉からぼとぼとと何かがこぼれた。
おかしいな…今日は何にも食べてないはずなのに。
「くせえんだよ！！ 近寄んじゃねえ！！ このバケモンが！！！」
怒鳴り声が、警報装置のように耳元で響き渡る。
鼓膜が破れるんじゃないかってくらい、大声で叫ばれる。痛い痛い痛い痛い痛い………
ごめんなさいごめんなさい、と呪文のように呟きながら、よろよろと床を這う。
床には飲みかけのアルミ缶が、いたるところに転がっていた。
酒のにおいが鼻をつき、濡れた床につんのめる。
それを見て苛立ったのか、今度は頭を蹴り飛ばされ、俺は今度こそ起き上がれなくなってしまった。
虚ろな目で、前を見る。
母さんが机でタバコを吸いながら、俺のことをぼうっと眺めていた。
助けてよ、母さん。
たすけて。
必死に目で訴えるが、母さんはただ、じっと俺を見ているだけで何も言わない。
頭を殴られ、頬を張られ、腫れ上がった唇では喋る事もできない。
18歳になって、俺の生活はなにもかも変わってしまった。
大人への第一歩を手に入れた俺は、そのほかの全てを失った。
目の前の、この男のせいで。
男が馬乗りになって、俺の顔をまた殴り始めた。
こんなになってもまだ、痛みを感じる体に、むしろ驚いていた。
ああ、このまま死ぬ。
そう思って目を瞑る。
痛みがだんだん遠のいて、怒鳴り声も聞こえなくなる。
ただ、視界に映った母さんの顔だけが消えなくて。
いつも口に引いている、紫のルージュが遅咲きの夜の桜みたいに、霞む俺の視界で舞った。
染めて傷んだ金髪も、細い指先も。
何もかも、懐かしく、美しかった。
ああ、どうか、幸せに。
俺の分まで。
そして今度こそ＿＿＿＿＿＿＿＿生まれ変わったなら。
俺のことを、愛してください、なんて。
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サヤ(プロフ) - 読み始めたばかりですが、面白いです！ でも気になるのが原作では38だったので主人公の年齢と釣り合ってないのが気になります……。 (2020年6月11日 10時) (
レス) id: d5b4d3cb80 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - RE MIさん» わわわ！！ 耐えられないくらい嬉しいです！！ ありがとうございます！！ (2019年10月18日 0時) (レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
RE MI(プロフ) - 耐えられないくらいこの小説すきぃ (2019年10月17日 23時) (レス) id: d7e1eef818 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 明里香さん» 毎度毎度すみません！ お恥ずかしい……いつもコメントありがとうございます！ (2019年10月17日 20時) (レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 43話に誤字がありました。「彼女と一瞬なんです」ではなく、「彼女と一緒なんです」です。 (2019年10月17日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年10月10日 22時
