77 ページ37
.
どういうことなんだ、これは。
封筒にきれいに折りたたまれて入れられていた手紙を全て読み終えて、俺はなかば茫然として考え込んでいた。
手紙___________というより、一種の独白に近いようなそれは、子供の書いた記録のように拙い文字でつづられている。文字を書くのになれていないのか、便せんがある手紙なのに、文字のひとつひとつがひどく波打って読みづらい。
仮にこの謎の文書を「日記」とすることにして、日記の主は間違いなく子供である。
名前は「ヒカル」。
しかし、この主とは、
「A、だよな？」
俺は一人呟いた。
一番最後の日記に綴られていることは、どう考えても俺とAが行った応酬である。Aが熱を出して一晩安室の家に泊まった日の翌日、俺とAが手ひどくやりあった後の、あの事件だ。
あの時Aはふらふらとトイレに向かった。俺は心配であとを追いかけた。ドア越しに声をかけた俺に、「だいじょうぶ、きにしないで」とどこか舌足らずな口調で告げてきたこともはっきりと覚えている。
そのときは、ただ熱っぽい頭がうまく回っていないのだろうと勝手に思っていた。だが、そうではなかったのか？
いや、ではなんだというのだろう？
そういえば、俺がトイレにたった彼に、「A」と呼びかけた時も、まるでうわの空だった。その呼び名に、まったく反応しなかったのだ。
それで様子がおかしいと俺は気になって………。
さらに最後から二枚目の日記で書かれている「金髪の青年」。これは安室君のことではないか？
そう考えれば、日記の中のヒカル少年が熱の症状をうったえているのも理解できるし、服がベッドのわきに置いてあるとか、パソコンが部屋の中にあるという描写もうなずける。熱をひいて倒れた安室君の部屋での出来事というわけだ。
「………なんなんだ、これは」
俺はもう一度呟いた。
日記の場面が特定できたからといって、まだ一歩も先に進んでいない。
それどころか、完全に迷宮入りしている。
訳が分からん。これではまるで怪奇現象だ。どうなっている？
……もう一度整理しよう。
「この日記を書いたのは“ヒカル”という少年。しかし彼が体験していることは、間違いなくAの体験そのものだ」
静まり返った書斎は、いつのまにか夕日の光も消え失せて、真っ暗になっていた。
俺は手元のランプをつけて、日記の幼い字をじっと眺めた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 935人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海星(プロフ) - カラ松ガールさん» ありがとうございますっ…！ めちゃくちゃ嬉しいです！！ 頑張ります！ (2019年10月31日 7時) (
レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - 前回からここまで一気読みしました！神ってました！大好きです！ (2019年10月30日 23時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 74話に誤字がありました。「有紀子」ではなく、「有希子」です。 (2019年10月28日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 架印�靴気�» わわわ！ ほんとですね！ お恥ずかしい…ご指摘ありがとうございますっ！ (2019年10月26日 10時) (レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 66話：「このタケシード姿、なかなかいいな」の所…。“タキシード”が“タケシード”になってますよ。 (2019年10月26日 0時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海星
| 作成日時：2019年10月18日 9時
