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「マリアには何もしないで……おねがい」
か弱い声が聞こえてきた。
声の主がトタトタと駆け寄ってきて、金髪の女の子に駆け寄った。
はっと息を飲む。レイくんだ。
レイくんは懸命に女の子を抱き起こそうとする。それをニヤニヤと笑いながら見下ろしてる男たち。吐き気がする。
「さて。じゃあ、鈴木次郎吉殿に第二報を差し上げようか」
第二報?
分からない。
話についていけない。
「おい、お嬢さん」
刈り上げの男が、私の顎をぐいっと掴んで、顔を上に向けた。
私は精一杯男を睨みつける。
「へえええ。こえーな。でも俺、あんたみたいな女嫌いじゃないぜ。顔もよくみりゃ悪くねーじゃん」
何様だ、クソ野郎。
「あんたには今から、あんたのおじさんに電話してもらう。俺たちが言うように喋れよ。妙なこと喋ったら__________」
男が胸元から鉛色に光るそれを取り出した。
非日常を告げるピストルのフォルムは、私の脳裏に不思議と零さんを思い出させた。
れいさん。
れいさん。
「このガキの命はねえ」
怯えたレイくんと女の子に、ピストルの銃口が向けられる。
今にも火を噴きそうなそいつに、私はどうしようもなく溢れ出てきそうな涙を、なんとかこらえた。
泣いちゃダメだ。
私がしっかりしなくちゃ。
わたしが。
そう言い聞かせても、とめられなかった。
心の中で、何度も叫ぶ。
助けて、零さん。
●
零side
「も、毛利探偵………」
会議室のドアが勢いよく開き、困惑顔を浮かべたスタッフが入ってきた。さっき蘭たちを探しに、ホールへ向かった係員だ。
その背後には……
「ら、蘭!!!!??」
「そ、それに園子も!!!!??」
毛利探偵と次郎吉さんが同時に椅子から立ち上がる。
そこにはスタッフと同じように困惑の色を浮かべた、蘭と園子の二人が佇んでいた。
「ど、どうして園子姉ちゃんがここに……」
「お、お前無事だったのか!!!? 逃げてきたのか!!?」
次郎吉さんが、物凄い勢いで園子さんに突進していき、激しく肩を揺さぶった。
「ちょ、ちょい待ち!! いったいぜんたいなんの話よ!!? 無事ってなに? 逃げてきたってどこから!?」
「どうしたの、みんな? こんな所に集合しちゃって」
蘭が首をかしげる。
「ねえ、そんなことよりAさん知らない? 迷子の子を連れて行ったきり、姿が見えなくなっちゃって……」
蘭が不安そうに俺たちに尋ねた。
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mei(プロフ) - 素敵すぎる…!!!胸キュンしすぎて苦しい状況に陥っています。どうしましょう。 (2022年5月5日 3時) (レス) @page46 id: b5f626851a (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - 甘々零さん、ごちそうさまです。私もそんなふうに思われたい! (2022年4月21日 17時) (レス) @page46 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
belle(プロフ) - この作品を何度読み返したことか…海星さんの書く零さん好きすぎます。また書いていただけませんか?是非読みたいです (2022年4月21日 0時) (レス) @page46 id: a2ba23688b (このIDを非表示/違反報告)
推しが尊いマン(プロフ) - はあああああ番外編最高かよおおおおおおお甘々じゃねえかよおおお最高ありがとうございます (2021年1月11日 15時) (レス) id: ae253cfa81 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - めちゃくちゃキュンキュンして一気に読んでしまいました!景光と零と夢主が夢の中で3人で会話してるの見たいです!更新待ってます! (2020年3月19日 19時) (レス) id: 2a4d2a700d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2018年6月15日 16時