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目の前には過去が在って、
隣には現在が在る。
なんだろう。
全てが溶けて混ざり合うような、不思議な感覚がする。
「……私はね、この曲大嫌い。」
篤「ふーん?」
「この世で一番嫌いかもしれない。笑」
篤「ふっ、フレデリックさん可哀想なんだけど。笑」
「…うん。笑」
現在、
絡まったままの過去を彼と笑い飛ばすことが出来たとしたら、ここで何かが少しずつ解けていくような気がして、
「…フレデリックさんは何も悪くないんだけど、自分が悪いんだけど、…多分ずっと、全部この曲のせいにしてたの。」
突然語り出した私の言葉は、何の事なのかさっぱり意味が分からないでしょ?
それでも、何も言わず頷く貴方が好きだ。
「きっとこの曲弾いたら、また駄目になると思ってた。また負けたら立ち直れないって思うと怖かった。」
何も聴かず頷く貴方が好きだ。
「たらればばっかり考えて、出来れば無難な方だけを選んで、…辛いものには蓋をしたいし、挑戦したいけど勇気が足りない。いつでも安全に勝ち進んでいきたいの。」
「…それって、やっぱり格好悪い?笑」
"ちょーダセー。"と、優しく笑う貴方が好きだ。
篤「けど、俺も人のこと言えないけどね。笑」
「え?」
小さく息を吐き出しながら、彼は躊躇いがちに頬を掻いて、
少しだけ弱々しい顔をして、
篤「あん時ちゃんと治しとけば良かった。…て、最近の俺の思考回路。笑」
「………」
篤「焦って試合出るんじゃなかったー。怪我しなきゃあのまま順調にいけたのに。また復帰して調子戻んなかったらどーしよー。ベンチ外とかなったらへこむわー。」
「………」
篤「どう、カッコ悪い?笑」
「…うん。格好悪い。笑」
"でしょ?"と視線を逸らす、貴方が好きだ。
篤「しょーがないっしょ。にんげんだもの。笑」
ポロンと鍵盤を転がしながら、冗談混じりに彼は笑って、
いつもと変わらぬ強弱のない口調で、いつもより少し弱い言葉たちを並べた。
きっと初めて聴いた、貴方の弱音。
篤「誰だってたらればくらい考えるでしょ。無難な方選んでいきたいのは当然でしょ。」
「…うん。」
篤「心ん中じゃ何かのせいにしてたりするしね、俺だって。」
弱々しい、貴方の本音。
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るる(プロフ) - ここでlaizさんに出会えたこと。このお話に出会えたことに感謝しています。ありがとうございます。長くなってしまってすみません。本当にありがとうございました! (2016年2月8日 21時) (レス) id: 8ab58f411b (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - laizさんが違う場所でまた始められると聞き、バラ1から読み直しています。頑張れ。負けるな。踏ん張れ。強くあろうとしよう。このお話に出てくる言葉一つ一つに連載当時勇気付けられたこと。懐かしく思い出しました。このお話は、言葉一つ一つが大好きで私の宝物です。 (2016年2月8日 21時) (レス) id: 8ab58f411b (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - momotanさん» momotanさん、はじめまして。コメントに気づかずお返事が遅れてしまいました(._.)申し訳ありません。。この小説の内田さん、実際の内田さんに近づけていたらいいな〜と思いながら書いています(*^^*)とても嬉しいご感想をありがとうございました! (2014年7月18日 19時) (レス) id: 21ade232d2 (このIDを非表示/違反報告)
momotan(プロフ) - はじめまして。なんだかこう、お話に入り込んでしまって。涙でます。内田選手のこと、まだ全然知らないんですが、このお話の内田さんが本当の内田さんならいいなって思うくらい愛おしいです。あー上手く書けなくてごめんなさい。続き楽しみに読みます(^-^) (2014年7月7日 17時) (レス) id: 713fce9fe2 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» こんばんは!そう思うと私も寂しいです。何だか描きたい事が沢山浮かんできて…σ^_^;内田選手、二週間との噂が出ていたので楽観視していましたが、現実はもっと辛いものでしたね。でも、信じて待ちます。大丈夫と。続編作成致しました。llでもよろしくお願いします! (2014年2月15日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2014年1月12日 20時