ノクターン第13番

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篤「なんで黙んの？さっきまで散々一人でくっちゃべってたくせに。」






乳白色の湯船をちゃぷんと鳴らしながら、背中から伸びてきた指が私の頬をつまんだ。



白い湯気が立ち込める中私は何故か動けずにいて、突然頬に落ちた感触に鼓動はまた一つ大きな音をたてる。

その瞬間"ふっ"と後ろで息を漏らした彼にもきっと、この振動は伝わってしまったのだろう。






「…恥ずかしいね、こういうの。」

篤「自分で誘ったんでしょ。」

「そうだけど…まさか一緒に入ってくれると思わなかった。篤人くん嫌がるだろうなって、」

篤「だから言ったっしょ。本当はすげー嫌なんだって。我慢してんですけど、」

「うん。笑」






聞き慣れた天邪鬼に強張っていた身体の力は自然と抜け、少しずつ彼の胸に体重を預けてみる。

濡れた彼の指先が、私の髪を優しく梳かした。






篤「髪色変えた？」

「分かる？あと少し短くしたんだよ。」

篤「いや、それはわかんねーわ。」

「結構変わったんだけどな。胸下まであったのが…ほら。上になったの。」

篤「知らねー。」






「篤人くんは髪型変えないの？」

篤「俺は別に鬱陶しくなきゃ何だっていいし。」

「昔からずっとそんな感じ？」

篤「んーまぁ、坊主だったりしたけどね。」

「…え？坊主？」

篤「なにその引いた感じ。」






篤「高1の時にいたでしょ。運動部入って坊主にさせられてるやつ。それ。」

「そうなんだ。私の学校運動部なかったから、」

篤「運動部ないって…独特すぎるでしょ、世界観が。」






くだらない会話にくすくす笑い合いながら、なんだかすっかりこのシチュエーションが気に入ってしまう。



いつもより身体が温まるかもなんて思ったり、

ずっとこうしていられるかもなんて思ったり、






篤「暑っ、」

「もうあがっちゃう？」






後ろに振り向けば、少し火照った彼の顔。

毛先からポタポタと水滴を落とすその様は何故かとても色っぽく思えて、妖艶に視えて、

"あがっちゃ駄目なの？"とくしゃりと笑うその笑顔とのギャップが、私の鼓動を刺激して、






「…あともう少しだけ、」






立ち上がろうとしたその腕を咄嗟に掴めば、彼は驚いたように私を見る。

照れ臭そうにすぐ逸らされた視線と共に漏れた溜息は、やはり何故かとても妖艶に響いて、

ちゃぷんと音をたて再び湯船に沈んだ彼は、私の身体を無理矢理元に戻し背中を包んだ。



先程より、少しキツく、

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