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相「そういえば、ニュース見たけど、」
"大丈夫?"と心配そうな顔をして問う幼馴染。
それが何のニュースであるのかはすぐに分かって、"うん。"と笑って頷いて見せた。
「調度お休みに入ったから、日本に帰ってリハビリするんだって。」
相「そっか。いつも思うけど、アスリートの人って精神力が凄いね。怪我なんて辛いだろうな。」
「…うん。」
相「Aは?」
「え?」
相「年末年始、日本帰るの?」
「…ううん。ウィーンにいるつもり。」
ーーーvorwarts…
<…あれ、年末どうすんの?>
<日本帰ってきたりすんの?>
ーーー
ーーーvorwarts…
<別に、知ってたけど聞いてみただけ、>
ーーー
「…そんな余裕ないもん。」
あの日の寂しそうな声が蘇るけれど、私には選んだ夢が待っている。
また一つ生まれたどうしようもない想いを、温かい紅茶と一緒に飲み込んだ。
相「結構大変?」
「うん。課題曲は順調なんだけどね、リサイタル審査のプログラムでちょっと悩んでて、」
相「確か、二つ用意しなくちゃいけないんだっけ?」
「うん。だから得意な曲で固めたいんだけど、それだと偏ってる気がして、」
相「リストとか今持ってる?」
「え?」
相「偉そうなことは言えないけど、一応経験者として何か力になれるかなと思って、」
ニコッと微笑んだ幼馴染は、私より何倍もの経験を積んできた先輩だ。
いまだに決められずにいるプログラムを、少し緊張しながら差し出した。
「……どうかな?」
相「んー…Aらしくて良いと思うよ。」
「本当?」
相「うん。言ってみれば篠崎Aの売りは、超絶技巧なわけだし、」
「うん。」
相「でも、テクニックだけだと"凄い"だけで終わっちゃうかもしれないね。」
「…うん、」
相「世界最高峰の大会だから、テクニックが凄い人はごまんといるよ。」
「………」
相「その中で抜きん出ようと思うなら、なにか他に訴えかけるものが必要なんじゃないかな?」
「………」
"ごめん。俺も偉そうなこと言えないんだけど、"と笑った幼馴染の指摘は、
まさに的確で、的を得ていて、
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るる(プロフ) - ここでlaizさんに出会えたこと。このお話に出会えたことに感謝しています。ありがとうございます。長くなってしまってすみません。本当にありがとうございました! (2016年2月8日 21時) (レス) id: 8ab58f411b (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - laizさんが違う場所でまた始められると聞き、バラ1から読み直しています。頑張れ。負けるな。踏ん張れ。強くあろうとしよう。このお話に出てくる言葉一つ一つに連載当時勇気付けられたこと。懐かしく思い出しました。このお話は、言葉一つ一つが大好きで私の宝物です。 (2016年2月8日 21時) (レス) id: 8ab58f411b (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - momotanさん» momotanさん、はじめまして。コメントに気づかずお返事が遅れてしまいました(._.)申し訳ありません。。この小説の内田さん、実際の内田さんに近づけていたらいいな〜と思いながら書いています(*^^*)とても嬉しいご感想をありがとうございました! (2014年7月18日 19時) (レス) id: 21ade232d2 (このIDを非表示/違反報告)
momotan(プロフ) - はじめまして。なんだかこう、お話に入り込んでしまって。涙でます。内田選手のこと、まだ全然知らないんですが、このお話の内田さんが本当の内田さんならいいなって思うくらい愛おしいです。あー上手く書けなくてごめんなさい。続き楽しみに読みます(^-^) (2014年7月7日 17時) (レス) id: 713fce9fe2 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» こんばんは!そう思うと私も寂しいです。何だか描きたい事が沢山浮かんできて…σ^_^;内田選手、二週間との噂が出ていたので楽観視していましたが、現実はもっと辛いものでしたね。でも、信じて待ちます。大丈夫と。続編作成致しました。llでもよろしくお願いします! (2014年2月15日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2014年1月12日 20時