ノクターン第13番

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篤「今日は？」

「え？」

篤「いつも話すでしょ。俺の全く興味のない一日の出来事を長々と、」






"聞いてあげてもいいけど、"と悪戯に口角を上げる彼はどこか力なく笑い、

そんな彼の姿は、なんとなくいつかも見たことがあるような気がする。






「今日はちゃんと聞いてくれるの？」

篤「ちゃんとかどうかは内容による。」

「いつもみたいな話だったら？」

篤「聞かない。」

「じゃあ面白くなるように心がけるね。」

篤「ふっ、頑張って、笑」






「今日はね、」






きっと今日も私の話は、いつもと変わらず"クソつまらなかった"だろう。



レッスンの帰りに美味しそうなケーキ屋さんを見つけたんだ。

ピアノの練習が終わってから食べるように冷蔵庫に入れてあるんだけど、今日はもう遅くて太りそうだから明日にする。



そんなどうでもいい話を彼が面白いと感じるはずはなくて、いつもならきっと知らね間に漫画を広げているだろう。

でも何故か今日は、
一つ一つ頷きながら笑っていた。



優しくて、でも少し力のない笑顔で、






「…篤人くんは？」

篤「ん？」

「今日の出来事。何か話したいことない？」

篤「あー……」






5秒程の間をあけて、"別に、"と続けた彼、

"別に、"ではないことはなんとなく分かっていたけれど、それ以上突っ込まれることが嫌いなことも良く分かっている。



その言葉の裏に、"聞かないで"の文字が隠されていることも良く分かっている。






「そっか。ゆっくり休んでね。」

篤「ん。そっちも。」






私たちはその夜、いつもと変わらず"おやすみ"と言ってSkypeを切った。









恋人の小さな違和感の意味を知ったのは翌朝のこと。

レッスンに出掛ける前に必ずチェックするYahooニュースで、一際私の目を引く"内田"の文字に続くのは、

彼の活躍を知らせるものではなかった。






内田 右太もも裏肉離れで数週間離脱へー






ーーーvorwarts…



＜弾いてくれんでしょ？俺が寝るまで、＞



ーーー






彼の長い長い苦悩が、また始まるーー

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