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だからこそ、今何を考えているのか分からないゾムに不安を覚えてしまいシャオロンは思わず恐る恐るゾムに声をかけた。

「…ゾム、大丈夫か?」

シャオロンの心配そうな言葉に、ゾムは若草色の瞳を揺らした。

「Aは、観光客としてこの国にきたかもしれんけど、それはAの意思やないって思う。もし本当に害するつもりなら命がけで俺らの国の人間を助けたりせんし、俺らを殺そうとする機会もあったはずやろ」

「それはそうかもしれへんけど…」

「それに、もし本当にAの意思で俺らを殺そうとするんやったら…俺は、Aを殺せるから、大丈夫やで」

そこまで言わせてしまってから初めてシャオロンは自分の心配がゾムに正しく伝わってないことを理解した。
シャオロンはただゾム自身のことを心配して声をかけたのだが、ゾムは自身の役割を心配されていると受け取ったのだ。
シャオロンの性格を考えればこの場面でそんな心配をするような人ではないと分かるはずだが、そこに至れないほどまでにゾムの心に余裕がないことを感じてしまってそれ以上何も言えなくなってしまった。
そしてそれは以前にゾムに問を投げたグルッペンも同様にシャオロンと同じことを感じて眉を顰めた。

“Aを殺す”

ゾムの言葉に鬱先生はゆっくりと瞼を開けた。

「ゾムさん、何もゾムさんがそないなことせんでもええんやで」

「…大先生?」

「ゾムさんが辛いのは僕も辛いから、僕が」

“殺すよ”

最後は声に出さずにただ微笑みを浮かべる鬱先生だが、正確に言葉を理解したゾムは目を見開き言葉を失った。
それはコネシマとロボロ以外の全員が同じだった。
コネシマとロボロだけがただ眉を顰めて、あの日指で拳銃を作った時の鬱先生を思い出していた。
その場でとうとう誰も言葉を発せられなくなった時、グルッペンは大きくため息をついて低い声で命令を出した。

「A殿の処遇についてはA殿を尋問してから決める。それまでA殿はあくまで客人だ。それと各自警戒を怠らぬように」

グルッペンの鶴の一声に、それぞれ思いを胸の中に秘め是の返事をした。
そしてその会議の後に状況を知らされたチーノ、エーミール、しんぺい神は各々反応を示しながらもグルッペンの決定に異を唱えることはなかった。

この日を基点に、Aを取り巻く状況が大きく動き出した。

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作品ジャンル:恋愛
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カラバコの中の子犬(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました…!言葉の使い方や文章がとても品があり、文も読みやすくとても素晴らしい作品です…!!感動しました!!素敵な小説をありがとうございます!更新をお待ちしております! (2020年12月30日 14時) (レス) id: e1ec4a729c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:乃鴉 | 作成日時:2020年12月23日 19時

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