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「頼んだゾ、エーミール。最低限基地内の状況把握さえできればいい、機密情報処理室さえ守られていれば情報処理室の奪還は急がなくていい。あそこにはどうせ大した情報も置いてないし、セキュリティの権限も機密情報処理室から押さえてしまえば問題はないからな。それより、通信が使えない状況で無作為に突っ込んで損害が出る方が問題だ」
「それやったら護衛も兼ねて俺のとこの部下何人かエミさんのとこにつけるわ」
「ありがとうございます、トントンさん」
エーミールのお礼を聞いてから本部の外に待機させていたトントンが率いる隊の中から数人選抜したトントンはエーミールと共に基地の様子を探るように指示を出す。
それよりも、と眉を顰めながら言葉を漏らすトントンにグルッペンも同じように懸念から千草色の目を細めた。
本部が通信が使えない現状の中今後の方針を思案している中、最前線のコネシマ、シャオロンも事態に気が付いていた。
「シャオロン、そっちはどうや」
「ダメやな、あっちのどことも繋がらん」
手元の無線機を片手に、両部隊は左右からX国の国境を越えた先で迎え出てきたX国の兵士を引き付け、戦闘していた。
東西それぞれから圧力かけながら侵攻するW国の左右遊撃隊はどちらかに何があってもすぐに対応できるように、一定距離でなら通信の要となる本部を介さなくても使える無線機を常に常備している。
最前線は状況が変わりやすく、本部の指示を待たずして独断する場面は少なからず訪れる。
その時に最善を最短で実行するのが左右遊撃隊の役割だ。
分かりやすく少し困ったように頭を掻いたコネシマはシャオロンに話しかけた。
「これ本部が押さえられたんか?」
「それなら撤退の合図が出るはずやろ」
「それもそうか。ちなみにそっちの戦況はどうや?」
「概ねデカい損害はないねんな。Aさんの名前出して降伏勧告して従うのが3割、薬のせいか会話にならへんのが3割、残りはAさんの名前出すとたまに逆切れするやつおるからそいつは殺しとるかな」
「こっちとあんま変わんないんやな。こっちも降伏勧告受け入れた隊がおんねんけど、聞いたらどうも庶民から兵士にさせられたらしくてAさんのことはむしろ心配しとった」
「あ、こっちにも似たようなやつが居ったわ。ある意味ここまで庶民だけやけど国民の支持を得られるAさんもすごいけど、そんなAさんをどうこうしようって思える王宮の奴ら頭沸きすぎやろ。全員薬漬けかなんかか?」
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カラバコの中の子犬(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました…!言葉の使い方や文章がとても品があり、文も読みやすくとても素晴らしい作品です…!!感動しました!!素敵な小説をありがとうございます!更新をお待ちしております! (2020年12月30日 14時) (レス) id: e1ec4a729c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乃鴉 | 作成日時:2020年12月23日 19時