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宣戦布告から約12時間後、戦争前夜の会議の後すぐにW国を出立していたゾムとひとらんらんはW国とX国の国境を越えようとしていた。
それぞれ数人のみの部下を連れた二人は互いに目を合わせ、耳元のインカムから聞こえる鬱先生の指示の元X国の雑踏に紛れながら進んでいく。
いきなり宣戦布告された側として、X国はW国に憤慨の意を示しながらも慌てて戦争の準備を進めているらしい。
チーノとショッピの様子も気になったが、そこは鬱先生たちが上手くやってくれていることを信じて己の役目を全うする。
雑踏を抜け、王宮の端で警備が居ない穴を潜り抜けて潜入したところで鬱先生との通信がいきなり途切れてしまった。

「大先生…?」

「大ちゃん、聞こえる?」

二人が呼び掛けても聞こえるのは砂嵐のような電波の波の音だけ。

「何かあったよね、これ」

「…多分、通信をやられたんちゃう?俺らが戦争国家やから、まずは通信さえ絶てばあとは量でどうにかなると思ったんやろ」

「確かにうちが戦争多いのは認めるけど、だからこそ踏んできた場数が違うってこと、分かってないね」

ちゃき、と不機嫌そうに鍔を鳴らすひとらんらんにゾムも同意を込めて小さく頷いた。
戦争中、指示の要となる通信が狙われたことなど星の数ほどある。
だからこそ、我々軍が戦略を練るにあたって大事なことがある。
それは、その戦争の終着点と、撤退の合図。
指示が受けられなくなった時、撤退の合図さえなければ己の役割を全うすることを共通認識としている。
それに場数を踏んできたからこそ、流れる空気を敏感に感じ取り、臨機応変に対応できる者だけが幹部として認められているのだ。

「撤退の合図はなさそうやし、さっさとこっちで決着つければええ話やろ」

「まぁ、狙われたのが本部なのか基地なのかは気になるけど…本部ならトントンも大ちゃんもいるし、基地だとしてもトリシアとロボロの隊がちゃんと対応するでしょ」

「せやな」

自分たちの使命が戦況を大きく左右することを理解している二人は、言葉少なに王宮内部の中枢を目指す。

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作品ジャンル:恋愛
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カラバコの中の子犬(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました…!言葉の使い方や文章がとても品があり、文も読みやすくとても素晴らしい作品です…!!感動しました!!素敵な小説をありがとうございます!更新をお待ちしております! (2020年12月30日 14時) (レス) id: e1ec4a729c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:乃鴉 | 作成日時:2020年12月23日 19時

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