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ゾムのために、そしてAのために、X国と戦争しAをX国から解放する。
Aやその家族に悪意を向けているのはX国そのものと言っても過言ではないだろう。
だからこそ、Aを傷つける全てを排除し、ついでにX国の資源も手に入れてしまえばいい。
“「俺の仲間が私利私欲ではなく純粋に望むもののためならば、俺はいつだって開戦宣言をするゾ」”
あの時のグルッペンの言葉を有言実行する時がきたのだ。
反対など出るはずもなく、ゾムがまた席に座ったことで話が進んだ。
まずはAをW国に連れてくるためにゾムが一人でX国に乗り込み、チーノと合流することになった。
話を聞いたチーノももちろん反対することなく、むしろ待ってましたとばかりに今いる屋敷の人たちにも協力を仰げるように話をつけた。
別の外交で今この場にいないひとらんらんとオスマンも通信で話を聞き、急ぎ帰国することとなった。
Aの処刑は三日後。
それまでにX国に乗り込んでAを連れ出し、説得するという役目にゾムはパーカーのフードを目深に被り頼もしい仲間たちを見回し微かに頬を緩めた。
一方、Aが自らの意志でX国に帰国した時のこと。
X国の王宮の片隅の部屋で、軟禁状態のAは帰国した時のことを思い出し1人寝室で項垂れていた。
W国を出る前日、密書を受け取ったAは自らの意志で軍基地を抜け出し国境付近でX国の兵士を待ち、そのままX国に帰国した。
そしてそのまままるで罪人のように兵士に囲まれたまま国王の前に連れてこられ、告げられた内容に言葉が出なかった。
「よくもこの国の国家機密を他国にばらしてくれたな」
「勅命を果たせなかったこと、謹んでこの身で罰を受ける所存です」
「…ああ、そうかやはりお前は知らなかったのか」
「陛下…?」
「お前がW国に流した“草”はこの国で秘密裏に育てているものだ」
「あの、どういうことでしょうか」
「多少あの“草”を使った薬は脳が壊れる影響はあるが、使い捨ての兵士を作るのに適していたというのに」
Aの疑問には答える気がなく、ただ愚痴のようにぼやかれる内容にAは次第に状況を理解してしまった。
まさか自分の国が使い捨ての兵士を作るために違法な薬に手を出していたこと、さらにはそれを他国に売り渡していたこと、そして実験のためにいなくなっても誰も困らない人間を探し出し裏で人体実験をしていたこと。
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カラバコの中の子犬(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました…!言葉の使い方や文章がとても品があり、文も読みやすくとても素晴らしい作品です…!!感動しました!!素敵な小説をありがとうございます!更新をお待ちしております! (2020年12月30日 14時) (レス) id: e1ec4a729c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乃鴉 | 作成日時:2020年12月23日 19時