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チーノがX国に新兵として潜入してから約1ヶ月ほど。
Aの実家の屋敷の警備にも慣れ、チーノの性格柄Aの母親や使用人たちとも少しずつ打ち解けるようになっていた。
屋敷の警備は基本的に屋敷に出入りする人間の監視だ。
だが、悪評となっているAやその周辺に好んで近づく者はおらず専ら暇を持て余したチーノが屋敷内で自主練習をしたり、たまに手伝ったり、Aの母親と世間話をするくらいだった。
しかし本文を忘れたわけではなく、一週間に一回ほど報告のために本部に顔を出してX国の現状をさり気なく把握しトントンに伝える。
先日のAの毒殺未遂の件は大っぴらに広まってはいなかった。
もちろんAの母親に伝えるのも憚られ、一旦は保留ということになっている。
そんな中、ある日チーノの仮の同僚である兵士が屋敷に訪れ、衝撃的な事実をチーノに告げていた。
「三日後に赤い髪の娘が裏切り者として処刑となる。それによってここの屋敷の人間も相応の罰を受けるから準備をしておけとのことだ」
あまりの内容に一瞬言葉をなくしたチーノだが、すぐにロンとしての仮面を表情で作る。
「…へぇ、随分急ですね。前に報告行ったときには何も聞いてないけど」
「昨日命令が下ったんだ」
「でも当の本人はW国にいるんじゃ」
「いや、既に昨日帰国しているとのことだ。今は王宮で謹慎している」
W国にいれば少なくともAの安全は守られると思っていただけに、その安全圏にいないことを知らされたチーノは今度こそ表情を無くし予備動作無しに目の前の男の顎を下から揺らすように殴る。
まさか仲間に襲われるとは思わなかった男はチーノの不意打ちをモロに受けて脳震盪を起こしその場に倒れた。
そしてチーノはすぐさま同僚の男を縛り、使用人の一人を捕まえてAの母親の元へと急ぐ。
「状況が変わりました。この屋敷に牢みないた外から鍵をかけられるような場所はありますか」
「あの、状況というのは」
「すみませんが後で説明させてください。とにかく今は場所を」
「それなら使っていない地下牢がありますが…」
「お借りします。それとできれば男性で血に強い方をお借りしたいんやけど」
「…それでしたら、庭師が別国で元傭兵だったと聞いています」
「分かりました、その人だけ連れて行きます。他の人は絶対に地下牢に来んといてください」
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カラバコの中の子犬(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました…!言葉の使い方や文章がとても品があり、文も読みやすくとても素晴らしい作品です…!!感動しました!!素敵な小説をありがとうございます!更新をお待ちしております! (2020年12月30日 14時) (レス) id: e1ec4a729c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乃鴉 | 作成日時:2020年12月23日 19時