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18. ページ18

「…なんで、そんなに受け入れられるんや。こんなん理不尽以外何もんでもないやん。ゾムもAさんも、誰やって幸せを望んでるはずやろ」

「こんな私ですがここで皆さんと過ごせたこと、ゾムさんに出会えたこと、それだけでも幸せでした。私は十分幸せなんです、鬱様」

「せやったら…!」

「だからこそ、私は私が成すべきことから逃げるわけにはいかないんです」

ゾムが来た時とは違い、本当に嬉しそうに、そして寂しそうに眉を下げながら笑うAに、鬱先生は結局引き金を引けなかった。
項垂れる鬱先生に、Aは銃を撃つことを強要することなく、ただ残念そうに何も言うことなく部屋から出て行く鬱先生を見送った。
Aの部屋を出た足で鬱先生は自室に向かうと、インカムを付けて思いを吐き出すようにインカムの相手に吐露した。

「シッマ…殺せんかった…」

「…大先生?」

「あんだけ大見得きっといて、あんなAさん見てもうたら、引き金引けんかった…」

「ちょっと待て!お前、グルッペンの決定忘れたんか?!」

「忘れとらんよ、けどさ、ゾムさんがそんな辛いことするんなら僕が背負ったってええやんか」

総統命令を違反しようとしたことをコネシマに漏らした鬱先生に思わずぎょっとしたコネシマだが、殺していないことをに安堵する。

「大先生、大先生やって、背負う必要はないんやで」

「僕はええんよ。でも、ゾムは…」

鬱先生の力ない言葉に、コネシマは言葉を探した。
この相棒もAほどではないとはいえ、自分を卑下し軽く見る傾向があることを誰よりも理解していた。
鬱先生は駄目な方に肩入れをしてしまう。
コネシマはそれを一番傍で見てきた理解者だ。

「…大先生、まさかAさんに話しとらんよな?」

「何を…まさかあれの話か?話せるわけないやろ」

顔を顰める鬱先生の表情が容易に浮かんでコネシマも内心同じ気持ちだった。

Aは殺されそうになった本当の理由を知らない。

Aは元々観光客としてW国に送られていたが、ずっと達成できずにいた。
その中で急にX国の外交官がW国に来たことで、Aは自身が勅命を果たせずに罰としてあの事件になったと思っている。
さらにはX国の外交官を我々軍が捕らえたことにより、どう弁明したところでAを裏切り者として処分しようとしているはずだと考えていた。
しかし、実際には違う。

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作品ジャンル:恋愛
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カラバコの中の子犬(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました…!言葉の使い方や文章がとても品があり、文も読みやすくとても素晴らしい作品です…!!感動しました!!素敵な小説をありがとうございます!更新をお待ちしております! (2020年12月30日 14時) (レス) id: e1ec4a729c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:乃鴉 | 作成日時:2020年12月23日 19時

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