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尋問の時と同じように、光のない瞳がゾムを捉えて離さない。
「次に訪ねてくださるときは、どうか私の願いを叶えてくれることを期待しております」
言外に殺さないのならば出て行けという言葉にゾムは素直にまた通気口から戻っていった。
途端に感情を落とし、無表情になったAは寝室に向かいベッドに身を投げた。
「…これでいい。王族としての自覚を、成すべきことをすれば私の正しさは証明される」
言い聞かせるように微かに震えるAの言葉はタールのように重く胸に圧し掛かった。
それでも譲れないのだと、傷つき揺れる若草色を振り切るようにきつく目を閉じた。
ゾムが現れた翌日、今度はドアがノックされ鬱先生がAの元にやってきた。
「元気、じゃないねんな…」
「…どうされましたか、鬱様」
名前を様付で呼ばれた鬱先生はぴくりと眉を動かしたがすぐに微笑みの中にそれを隠す。
「グルッペンから聞いたで。Aさん、ゾムに殺してほしいって言うたって」
「はい」
「ほんま、あんまり酷なこと言わんといてやってや。あいつ初めてやねん、あんなにも誰かに執着すんの」
優しく言う鬱先生の言葉の意味を察して、Aは思わず黙ってしまった。
「Aさんやってあいつを傷つけたいわけやないやろ？せやったら、提案があんねんけど」
「提案とは…」
問うAに、鬱先生は明確に簡単な答えを返した。
懐から銃を取り出し、それをAの胸元に向ける。
「多分、あいつ初恋やねん。そんなんさ、例え初恋が叶わんくても、トラウマ作ってまで辛い思いせんでもええと思うんよ。俺やって幹部やで？ゾムやなくても、ちょっとはマシやろ？」
「鬱様…」
「な？苦しまんよう一発で殺すから、あいつのことは許したってや」
へらりと笑う鬱先生だが、Aに向けられるその銃口が微かに揺れていたのをAは見てしまった。
仲間のために、仲間の心を守るために自ら汚れ役をかって出るほどの優しさに、Aはきゅっと唇を噛んだ。
それでもゆっくりと銃口に両手を添えると、それを上の方に押し上げる。
「…A、さん」
微かに目を見開く鬱先生の紺色が初めて揺れるのを見たAは小さく微笑んだ。
「それでしたら、万が一にも生き残ることがないよう、狙うならここをどうぞ」
ぴったりと銃口を自身の額に押し付けるAに鬱先生は短く息を吐いた。
徐々に歪む表情に、鬱先生は自分でも抑えられないほどの感情に胸が苦しくて吐き出してしまった。
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カラバコの中の子犬(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました…！言葉の使い方や文章がとても品があり、文も読みやすくとても素晴らしい作品です…！！感動しました！！素敵な小説をありがとうございます！更新をお待ちしております！ (2020年12月30日 14時) (
レス) id: e1ec4a729c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：乃鴉 | 作成日時：2020年12月23日 19時
