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「…本当に、申し訳ありません」
「これについては以上です。けどもう一つ、A様にお説教があります」
「はい」
「エミさんは、A様が望まれるから知識をお渡ししました。それはA様を苦しめるためでも、ましてや殺すためなんかではありません」
真剣な表情で言うしんぺい神にAはぐっと唇を噛みしめた。
Aを気遣うように眉を下げてずっと傍にいるエーミールをそっと見上げた。
「…エーミール様」
「本当に、意識が戻ってよかったです。A様」
まるで仕方のない子供を見るように苦笑いをしながら、それでも優しい声に罪悪感が溢れて止まらなかった。
「私が浅はかでした…本当に、ごめんなさい。エーミール様」
「確かにA様のされたことを褒めるわけにはいきませんが、それでも少しでも私の知識が役に立ったのならそれが何よりです」
「とにかくA様は無事回復されましたが、明日一日は絶対安静です。その後のことはグルッペンから話があるはずですから。エミさん、グルッペンに報告と、明日一日だけはエミさんとトリシア以外は面会謝絶って言っておいて」
「えっと…」
「なに?」
「その、ゾムさんだけでも、駄目でしょうか…?」
伺うようなエーミールの言葉に、しんぺい神はそっとAを盗み見たが、ゾムという単語を聞いて目を伏せるAに小さく首を横に振った。
絶対安静の中、感情が大きく揺れ動くようなことでも避けたいのが医者心。
心底残念そうに項垂れたエーミールは報告のために医務室を後にした。
それから翌日はしんぺい神、エーミール、トリシアだけがAと接することが許された。
Aの密命に全く触れることなく、ただ患者として体を治すことだけを最優先に求められAは大人しく言うことを聞いた。
そしてその夜、眉を下げ何も言えないエーミールの表情にAはふわりと微笑んだ。
「大丈夫ですよ、エーミール様」
「ですが…」
「明日は尋問ですね、分かりました。早く寝て体調を万全にします」
「何で、そんなに冷静でいられるんですか…?尋問なんて、普通王族の方が経験するようなものじゃないですよ…」
「そうですね…ですが、例え尋問だとしても、皆さまは私の話を聞いてくださいますから」
話を聞かない、存在すらも否定されるよりはよっぽど待遇がいいのだというAの言葉にエーミールはまた何も言えなくなり夜の挨拶をして医務室を後にした。
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カラバコの中の子犬(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました…!言葉の使い方や文章がとても品があり、文も読みやすくとても素晴らしい作品です…!!感動しました!!素敵な小説をありがとうございます!更新をお待ちしております! (2020年12月30日 14時) (レス) id: e1ec4a729c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乃鴉 | 作成日時:2020年12月23日 19時