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「全部説明してもらうで?」
口元は口角を上げて微笑んでいるように見えるも、前髪の隙間から見える若草色の瞳は鋭く断じて表情と一致していなかった。
うろうろと視線を彷徨わせてしどろもどろにどう説明しようか悩んでいる最中、女の子が呼んだ先生とやらが慌てた様子でゾムの傍に行く。
「ゾム様、この度は…」
「あー、堅っ苦しいのはええねん。ちょっと聞きたいことがあってな」
あくまで優しく、責めないような口調で問えば中年の女性はちらりとAを見てから小さく頷いた。
「もしかしてこいつ何度かここに来とる?」
「ええ、そうですね…最初は悪い輩に絡まれていた子供を助けていただいて、お礼にこちらに来ていただいたら子供たちと仲良くなられたようで、何度か遊んでいただいています」
「…ほう?何度か、なぁ?ちなみに今日で何度目や」
「えっと、確か8度目ほどだったかと」
Aがこの国にきてから2ヶ月。
8度目ということは単純計算で週に一回ここに来ていることになる。
ゾムは頭が痛くなりそうな話に大きくため息をついてAをじろりと睨んだ。
「…だって、基地の中でできることは少ないし、私の国でもよく街には行ってたから」
とうとう観念したのか呟くように白状すれば先生は慌ててそんなAを庇うように言った。
「私どももすぐにお伝えしなかったのがいけなかったのです。確かに今外交問題で隣国から王族の方がきているとは知っておりましたが、その…」
「いや、あんたは悪くないで。そこのお転婆娘を王族の姫やと思う方が無理あるやろ」
「私は私にできることをしただけよ!お転婆と言われる筋合いはないでしょう!」
「そのできることに木登りや悪党退治も入っとるんか?自分がどんな立場か分かっとるんやろな?」
「分かってる。でも」
真っすぐにゾムを見据える深紅の双眸が、不意に覚悟を伴ったのをゾムは本能で察した。
「目の前で困ってる無辜の民がいるならば、それを助けない道理はないの。私が王族であるならなおさら、民を守るために立ち上がるのは必然であり、当然よ。例えそれが他国であろうとも、私が王族である限り私の目の前で困っている人がいるならいつだって何度だって手を伸ばすわ」
だから、自分のしたことに後悔はないと言い切ったその力強い瞳に、ゾムは一瞬言葉をなくして見入ってしまった。
篝火のようにめらりと燃える双眸が揺れない芯の強さを表すようにゾムを射抜いた。
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作者名:乃鴉 | 作成日時:2020年6月24日 19時