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Aがゾムから贈り物をされた翌日、Aは朝から自身が使っている客室のドアをノックされる音で起こされ、ドアを開けた先でひたすら困惑していた。
「おはようございます、A様。この度この日よりA様の侍女を申し付かりましたトリシアと申します。至らない点もあるかと思いますが、精一杯務めさせていただきます」
侍女、基メイドが綺麗なお辞儀をして顔を上げた。
長いのか黒髪を頭の後ろでお団子状にまとめ上げ、猫目の黒い大きな瞳でAを見続ける中、Aはなんといえばいいか分からず何度か口を開閉し、意を決してトリシアに問いかけた。
「…侍女はいらいないと、言ったはずですが」
「存じております」
「存じ…はい…」
「ですが、やはりこの男所帯の中で男性の護衛のみでは何かと不便もあるかと思います。そういった時のために、同性の私がご対応を承れればと思っております」
「今までも侍女を付けたことはないので、自分のことは自分でできます」
「A様に何かあってからでは遅いですので」
「えっと、でも今のところ特に問題はないので…」
「今問題がなくとも今後問題が発生する可能性があります。A様は淑女なのですから、男性にご相談し辛いこともあるかと」
「いえ、あの…」
「そもそも、お客様といえど王族の方に侍女一人つけていなかったこと自体この国の品位や常識を問われることでもあります。もっと早くお話しいただければ私もすぐに対応できましたのに…この国の怠慢が大変申し訳ありません」
「本当にわざわざしていただくことがないのですが…」
「そういうわけにはいきません。せめてお部屋のお掃除やベッドメイク、身支度や身の回りのお手伝いはさせていただきます」
「あ、はい…」
侍女はいらないと一点張りしていたAも無表情のまま頑なに譲らないトリシアの静かなる圧にとうとう折れざるを得なかった。
Aの許可を得たことで微かに嬉しそうに口角を上げたトリシアは一礼すると早速黒い給仕服の裾を翻しながら客室に入り室内の様子を確かめる。
「綺麗に使用されているようで安心致しました。中にはとても汚くされる方もいらっしゃるので…これなら軽くお掃除とベッドメイクさえできれば問題なさそうですね。X国よりお持ちになりましたお荷物の方の整理は大丈夫でしょうか?」
「元々荷物はそんなにないので全てクローゼット内に入ってます」
「拝見してもよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ」
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作者名:乃鴉 | 作成日時:2020年6月24日 19時