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グルッペンは真っすぐにエーミールを射抜いて沈黙で要件を問う。
「ゾムさんの件ですが、一先ずは落ち着きました。これで多少はマシになるとええですけど」
「そうか、ご苦労」
グルッペンの応えに肩の力を抜いたエーミールをオスマンは笑顔で手招きし、隣に座ったエーミールに自分が飲んでいるのと同じ紅茶を振舞った。
「エミさんも大変やね、子供のお守りやん」
「言っとくけど大先生が書類ため込んどらんかったらお前に行かせる予定やったからな」
「うへぇ、トンち。それは悪手やわ」
「俺も大先生は合わないと思うゾ」
「ほらグルちゃんもこう言うてる」
「お前威張ることやないからな？！」
トントンが叱咤すれば鬱先生はへらりと情けなく笑ってグルッペンを見やる。
その視線を感じながらグルッペンはエーミールの名前を呼んだ。
「大先生は良くも悪くも駄目な方に肩入れしてしまうからな。その点エーミールなら両者の立場で達観的にゾムと話せると思ったんや。それで、ゾムがああなった理由は分かったのか？」
「うーん…本気でA様を嫌いになったり役に立たへんとは思ってないと思うけど、正直分からんのが本音です」
「役に立つも何も、A様は友好結ぶために来とるだけやろ。まぁ、体のいい人質ですわ」
「トントン」
「取り繕っても無駄やろマンちゃん。あの国が何考えとんのかホンマに分からんくて腹立つ」
「…まだちょっと話しただけやけど、A様は聡明やと思いますよ」
「エーミールの意見に俺も賛成めう。自分の立場をよく分かっていたしその上で自分がどうすべきかちゃんと考えとった」
「ま、俺もマンちゃんと同じかな。グルちゃんはどうなん？」
最後に話を振られたグルッペンはふむ、と視線をくるりと回して思考を深めた。
「正直よく分からん。ただこの国を混乱に貶めたいのなら速攻で仕掛けてきてもよさそうやろ」
「ああ、大先生に色仕掛けとか？」
「トンち？！」
「お綺麗な人でしたからね、大先生ならあっという間ですね」
「おう童貞イキんなや」
「ホンマ俺に当たり強いな？！」
いつもの雑談の雰囲気になってしまいオスマンは小さく息をついた。
初日に鬱先生と一緒に聞いたあの時のAの言葉の意味を図りかねている現状がもどかしく、何故もどかしいかも分からずに足踏みをしている感覚がただ気持ち悪かった。
それから数か月後Aがゾムを中心に何度も内ゲバに巻き込まれるなど夢にも思わなかったのはまた別の話である。
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作者名：乃鴉 | 作成日時：2020年6月24日 19時
