【wrwrd】強さを教えて【zm】 (ページ33)

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「俺はエミさんに役立たずなんて言ったことないやろ」

「内ゲバではよく言われますけどね…」

「茶化すなや、ホンマにしばくぞ」

「でも、嬉しいです」

「…エミさんとあの女は違うやろ。エミさんは仲間や」

不満そうに、拗ねたように呟かれたゾムの言葉を拾って、エーミールは嬉しそうに笑んだ。
そして優しく、諭すように言う。

「確かに、A様は他国から来た人やけどええ人ですよ」

「他国の、それも王族やぞ。どんな風に首突っ込んで出しゃばってくるか分かったもんやない」

「あの人がそういう人じゃないことを、ゾムさんも何となく分かっているはすやと思いますけど」

その言葉にゾムが閉口したのを確認して、エーミールは言葉を続けた。

「確かにある意味敵国になり得る国の人かもしれません。でも、あの人はきちんと私たちと向かい合うことを望んでますよ」

さらに「その上負けず嫌いな方のようですし」と言えば、ゾムはAが来た初日を思い出してしまい思いきり眉を顰め、エーミールは笑い声を漏らした。

「…なんや、エミさんはちゃんとあの女を見ろ言うんか」

「他国の王族の方をそう呼べる時点で怖いものはないと思いますよ…聞いてる俺ですら今も怖いわ…」

「俺より弱い奴なんか怖くないわ」

「さすゾムです…」

不遜とも言えるその態度と余裕がゾムを強者たらしめることを知っているエーミールは、らしくなく理由なく他者を避けていたゾムがいつもの余裕を取り戻したことを素直に喜んだ。
常であればたとえ機嫌が悪かろうとゾムの他者に対する態度は二通りだった。
仲間には仲間として接するか、気に入らなかったり興味がない人間は空気として扱うか。
後者に至っては強者故の思考だろうが、そういった人間に対し自分の行動を変えることは今まで一度もなかったのだ。

相手を避けるということは、その相手をいい意味でも悪い意味でも意識しているのと同義なのだから。
Aの何がゾムの琴線に触れたかは分からないが、吹っ切れた様子のいつも通りのゾムの様子にエーミールはその場で別れを告げて向かう先は、総統執務室。

「エーミールです」

「入れ」

紳士らしく、礼儀正しくノックをして許可を得てからドアを開ければ集まっている面子に微かに乳白色の瞳を見開きながらも素早くドアを閉めてゆっくりと近づく。
ある程度の距離で立ち止まったエーミールに鬱先生はひらりと片手を振り、オスマンは優雅にティーカップを傾け、トントンは書類から目を離し。