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Aを送った後、ゾムは踵を返し真っすぐ情報管理室へと向かった。
ノックもせずにドアを開ければ鬱先生とロボロが多数あるモニターを見ながら雑談をしていたが、すぐにドアから入ったゾムに気が付いて鬱先生が片手を挙げて歓迎した。
「任務達成ご苦労さん」
「別に任務やないやろ、こんなん」
そう言いながらゾムが鬱先生のそばまで行って画面を覗き込む仕草をすれば、察した鬱先生はすぐにとあるにモニターを映し出す。
「それにしても、マンちゃんも何でこんなことするんやろ」
モニターに映し出される基地内のマップの中で光る赤い点滅が、とある部屋の中で存在感を示している。
「大先生、確認テストが出来たんならもう消した方がええで。グルッペンとオスマンからも必要な時だけや言うてたやろ」
「はいはい、分かってるて。これやから童貞はモテへんのやで」
「しばいたろか」
不愉快そうに思いきり眉を顰めたロボロの低い言葉を無視した鬱先生は、赤い点滅を切って目線だけゾムに向けすぐにモニターに戻し、何でもない風にゾムに問いかけた。
「アレ、Aさんに似合っとった？」
「悪くないと思うで」
淡々と答えるゾムの真意を伺えず、鬱先生は思わず小さく肩を竦めた。
「ほんなら、次会う時が楽しみやね」
「間違っても手ぇ出すなよ」
「せやぞ、大先生は前科持ちやからな」
「泣くで」
さすがに女関係が乱れている鬱先生でも、さすがに他国の王族に手を出せばどれだけ面倒なことになるか分かっていると据えた目でロボロとゾムを見たが、紅梅色と若草色の双眸が全く自分を信用していないことを察して大げさに項垂れた。
用事が済んだゾムは今度はエーミールの書庫に向かってゆっくりと歩いた。
時はAがこの国に来た頃まで遡り、ゾムの中でAは最初こそ印象が最悪だった。
若い女で、王族で、何の苦労もしなかったような綺麗なドレスを着た綺麗な女が、一体何の役に立つのだろうか。
交渉にきた割にはただ友好関係を結ぶだけ、多少オスマンと両国について話合うところは見たことはあるが結局現状何の進展もない。
何かに秀でているようにも見えず、何の役にも立たない他国の人間なぞ置いたところでこちらには何の利益もないというのに。
だからこそ、礼儀だけは正しいAから挨拶されても一瞥のみで返事を返すこともなかったし、会うのも話すのも嫌で避け続けた。
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作者名：乃鴉 | 作成日時：2020年6月24日 19時
