【wrwrd】強さを教えて【zm】 (ページ4)

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オスマンはいつもの微笑みを潜めてAを観察した。
X国との交渉は言わば物資に関するものだ。
隣国として仲良くしましょうねという取引に相手がどうにも渋ったり極端に利権を握ろうとしているのが丸わかりの状態で、さてどうしようかという中でAが送られてきたのだが。
先ほどから礼儀を重んじてこちらの意図を読み取ろうとしているAからはX国の雰囲気と同じようなものを感じない。
むしろ思慮深ささえ感じられ、X国との交渉の中で特に浮いているように思えた。

「…失礼ですが、ここに来られた理由はご存知でしょうか？」

唐突なオスマンの問いに、Aはぱちくりと目を瞬かせた。

「それは、先ほどこちらの挨拶にもお話させていただきましたように交渉のために」

「何故交渉の為に来られる必要があるのでしょうか」

「……」

オスマンの問いの意味を正確に理解した2人はそれぞれ反応を示す。
鬱はAに視線を向け、Aは思案するように視線をくるりと回した。

「…友好な関係を築くために、ではだめですか？」

「表向きはそうだと思っています。ですが、別に答えを出しているのでは？」

「どうしてでしょう？」

「純粋にあの国の方として考え方が異なっているように見えたので」

探るようなオスマンの視線から逃れるようにふいっとAが目を逸らし、オスマンと鬱先生は目を合わせた。
溜めるように息をついたAは諦めを含んだ苦笑いをした。

「…言った通りです。王族といえど、私自身に地位はないも同じですから」

交渉という大義名分の元、人質としてAの意志とは関係なく送られたのだとすぐに察した。
そして人質としての価値すらも危ういととれるAの言葉を受けてオスマンは微かに眉を顰め、鬱先生は肩を竦めた。

「…今後絶対に外でそのように言わないでいただけますか」

「オスマン様…」

「我々も被害者だが、貴女も立派な被害者です」

「マンちゃんの言う通りやね。ここにおる間は僕らが守ってあげられるけど、それも絶対やない。ある意味敵地のど真ん中に一人おるようなものやから、気を付けとってな」

「…ご忠告、感謝いたします」

困惑したように、だけど悪い意味ではなくどう反応すればいいのか分からないといった雰囲気だがそれでも礼儀正しく頷くAに二人は微かに笑みを零した。
なるほど、思慮深く全てを明かさないが、悪い人ではないな、と。