【wrwrd】強さを教えて【zm】 (ページ5)

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さて、Aが我々軍基地に滞在して2ヶ月が経とうとしていた。

普段は基地内の警備が厳重な客間にて過ごし、限定的ではあるが用があればA一人でも行ける場所が増えた。
幹部たちもたまに訪ねることがあるが、Aが王族であり、淑女であることを考慮して基本的に尋ねる場合は事前に連絡するなど最低限のルールを設けていた。
しかし、その中で鬱先生は幹部の中で誰よりも早くAと打ち解けるのが早かったからか、その日に限って事前の連絡なくAのいる客間を訪ねていた。

「Aさん、ちょっと聞きたいことがあんねんけど」

ドアを数度ノックして返事を待つが、待てども何の反応もなく鬱先生は首を傾げる。
お昼過ぎの真昼間はいつもであればすぐに微笑みながら出迎えてくれるはずなのに、と思いながら軍人としての直感から申し訳なさげに気配を探れば部屋内には誰もいないように感じる。
どこかに出ているのかと、ふとドアノブを回してみれば不用心に開いてしまい、申し訳なく思いながらもそっとドアを開けると真っ先に視界に飛び込んできたのは。

「…いやいやいやいや？！はぁ？！」

開け放された窓と、机に置かれた小さな紙一枚。
慌てて窓の外を確認すれば一階まで垂れているロープが全てを物語っており、机に置かれた小さな紙が駄目押しとばかりに鬱先生の思考を掻き回した。

"夕方頃には戻ります"

綺麗な字で書かれたが故に見間違うことのない文面に思わず頭を抱える。
何考えてるんだと叫びだしたかったが、まずは現状把握が第一だろう。
他国といえど王族の身なのだ、何かあってこちらにいちゃもんをつけられては堪らないと鬱先生は慌ててインカムのスイッチを入れて幹部全員に事の次第とAの捜索を依頼した。
一般兵に事の次第を知られるわけにはいかず、幹部数名でとにかく軍基地内と近場を探すこととなった。
探す要員の一人となったゾムは、苛立ちを隠そうともせずに街へ向かっていた。
万が一誘拐等の可能性を考え、少数であり最大戦力であるゾムが対応できるようにと指示を受けたゾムはぶつぶつと呪詛を呟きながら人目を避けるような道を行く。
暫くしても全く見つからず、道行く人に訊ねるしかないのかと腹を括ろうとした、その時。

「お姉ちゃん！」

聞こえてきた幼い声に反応する。
次いで視界に入ってきた光景に思わず目を見開き硬直してしまった。