【wrwrd】強さを教えて【zm】 (ページ1)

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隣国より交渉の余地として人質を送られてきた。

本来なら朝一で始まるはずの報告会や戦略会議をすっ飛ばして苦い表情のグルッペンの言葉に、その場にいた全員が空いた口が塞がらなかった。

「…なんやて？」

グルッペン以外のメンバーを代表して、トントンが震える声で問う。
対してグルッペンは更に眉間に皺を寄せて低く唸るように言った。

「隣国より交渉の余地として人質を送られてきた」

先程と全く同じ文言を。
これにはトントンが一早く椅子を倒しながら勢いよく立ち上がり更なる説明を求めた。

「いやいやいやいやいや？！何でそうなんねん？！何や人質って！交渉何時まで長引かせんねんて思っとった矢先にこれかいな！あいつら頭おかしいんちゃうか？！」

「こればっかりはトントンに同意やわ…え、何で人質？いつ送られてくるんや？」

「ついさっきだ。今はオスマンが対応している」

鬱先生の疑問に答えたグルッペンの言葉にメンバーがハッとしてこの場に外交官であるオスマンがいないことを視認した。
こういった冗談を厭うグルッペンにこの場にいないオスマン。
メンバーは各々事態の確信と深刻さを理解し始めて様々な反応を示した。
その中で席を立つ者の背中に、グルッペンが声をかけた。

「ゾム」

呼ばれたゾムは面倒そうに振り返り隠しもせずに答えた。

「それ、俺関係ないねんな？人質なんて邪魔なだけやん。どうせ交渉のために送られた言うてもそんなに価値のあるもんちゃうやろ。殺した方が早いんちゃう？」

「馬鹿言え、確かにこっちとしては人質なんぞ貰ったところで価値はないが仮にも王族の人間だ。無闇に殺せば隙になる」

「面倒やんなぁ…全員殺してええなら殺すけど」

一瞬その場を支配する冷たい空気が、明らかにゾムの機嫌が急降下していることを示していたがグルッペンは敢えて黙殺した。
何もするな、殺すことも許さない、と。
毅然としたグルッペンにゾムは息をついて無言でその場を後にしようとした。
その時、ゾムが開ける前に会議室のドアが開いた。
その場の全員がドアの方に視線を向けると先頭にオスマン、その後ろに1人の女がいた。
オスマンがスっと右に数歩移動すると、女は1歩踏み出して身に纏うドレスの裾を両手でつまみ上げ燃えるような真紅の髪を垂らしながら頭を少しだけ垂れた。