逸る気持ち【1】 ページ40
予想通り。司くんは朝早くから自主練習していた。早速昨日泉くんからもらったDDDで使う曲を確認した。
「『Checkmate Knights』かぁ……」
「お姉さまは完璧ですよね。以前見させていただいた時にそう感じました」
こんなどストレートに褒められて嬉しくない人はいない。さすがKnights志望なだけはある。しかも現メンバーにはいないタイプ。お姉さま呼びは新鮮だなぁ。
「完璧ってわけじゃないけどね」
「いえ。そんな事はないです。お姉さまはMarvelousです！」
「そ、そんな褒められても……」
いつだって真正面から褒めてくれる司くん。私は逆に恥ずかしくなって困ってしまうけど、それが嬉しいファンだっているし。需要はある。
「お姉さまは可愛らしい方ですね」
「つ、司くん。もう授業、始まるから！」
耐えきれなくなり授業が始まると解散を促せばさらに司くんは近づいてくる。これ以上は耐えられない。申し訳ないけど逃げさせてもらおう！
「ご、ごめんね私先に行くから！」
「あ、お姉さまお待ちください！」
後ろから引き止める声が聞こえたけど心を鬼にして教室まで走って行った。ごめんね司くん。教室に入ると近くにいた仁兎くんにぶつかりそうになってしまった。危ない危ない。
「こらAちん！危ないぞ」
「あ、ごめんね仁兎くん！」
「何かあったのか？顔が赤いぞ」
「えっ。い、急いでたからかな？」
仁兎くんから指摘されて慌てて誤魔化したけど首を傾げていた。
授業を受けている間にそんな事もすっかり忘れていたが、また司くんと顔を合わせる時間が近づくにつれ思い出して行くのを躊躇ってしまった。
「あれ、使えない？」
「Aちゃん？何してるの」
「泉くん。いつもここ使ってたんだけど」
いつも使っている防音室に一足先に着くと、丁度泉くんが出て来た所だった。何故今ここから出て来たのか。今1番の疑問である。聞けばまた目を逸らしてはぐらかそうとした。この前から一体何をしてるの泉くんは。
「お待たせしてすみませんお姉さま。と、瀬名先輩？」
「悪いけど今日からは別の所使ってくれる？はい、鍵。俺は用があるから」
「え、ちょっと泉くん」
手のひらに鍵を乗せてそのまま去っていってしまった泉くん。仕方ない。司くんを連れて渡された鍵の部屋に移動した。
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作者名：のあ | 作成日時：2022年6月8日 0時
