Tricksterと懐かしい出会い【1】 ページ34
零さんに誘われレッスン室を出たはいいものの、羽風くんがどこにいるのかさっぱり分からない。私には心当たりが無さすぎる。
「それじゃあ行こうかの」
「え、どこへ？」
「我輩についてくるがよい」
言われるがままついて行くと、そこはガーデンテラスだった。到底いるとは思えないんだけど。
そう思い見回して見ると、羽風くんともう1人。ネクタイの色を見るからに2年生。知らない顔だ。おそらくTricksterの子なんだろうけど、練習してるんじゃ？
「見つけたぞい。薫くん」
「朔間さんとAちゃん？」
話を聞いていると羽風くんが抜け出したのは練習をする気がないから。それよりも女の子と遊んでいる方良いらしい。
「ぶっつけ本番でも問題ないじゃろうが……」
「そうなの？」
「俺は練習しなくてもできちゃうからね〜。Aちゃんが来てくれるなら練習出てもいいよ〜」
とんでもない言葉が聞こえた。『ぶっつけ本番でも問題ない』？そんな実力あるの羽風くん。そうは見えないんだけど……。
「あ、今そうは見えないって思ったでしょAちゃん？」
「いや、そんな事は……」
図星。言い当てられて目を逸らしながら否定する。が、羽風くんはどんどん顔を近づけられる。近い近い。本当にチャラいのね羽風くんは。
「あの〜……俺の事忘れないでもらえます？」
「えっあ！ごめんね。えっと」
「Tricksterの衣更真緒です」
「衣更くん、ね。私はA A。3年だよ」
控えめに入ってきた2年生の子・衣更真緒くんにより中断される。お互い自己紹介をし合っている間に零さんと羽風くんは話し合い？を終わらせていた。
「じゃあねAちゃん。今度こそデートしようね〜」
「しません」
デートのお誘いを丁重にお断りして零さんに視線を向ける。今度は衣更くんと話をしている。さっきから私除け者にされてる？ちょっと寂しいよ。
「……あぁ。言い忘れておった。転校生の嬢ちゃんはその戸棚のなかにおるっぽいからのう」
「なんで戸棚？」
あんずちゃんどうしてしまったというの。いくらなんでも奇行過ぎるよ。
「もう安心じゃ、と伝えておくれ。薫くんにも、あまり『ちょっかい』出さんよう言っておくからのう？」
「羽風くん……ちょっかい……あぁ」
零さんの話で分かった。羽風くんがあんずちゃんになにかしようとして戸棚に逃げ込んだのね。気持ちは分からなくもないよ。
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作者名：のあ | 作成日時：2022年6月8日 0時
