挑発 ページ6
頭を強く床に打ち付けられて歯を強く食いしばる。
目の前は一瞬真っ白になったが、持ちこたえた。
私は耐えるだけで良い。耐えて耐えて、その時が来るのを待つだけでいいのに、どうしてこんなに痛いのだろう。
「...アンタって、殴る蹴るの暴力の割には、私の顔に傷一つつけたことなかったよね」
「...」
「...ほら、今だって顔面は殴らなかった。私と私の母親って、そんなに顔、似てる?」
男は黙り込んだ。彼は私を通して母の面影でも見ているのだろうか。知ったこっちゃないが。
小さい頃につけられた痣や切り傷は残っている。
母は、こういう行為を嫌がって逃げたのだろうか。
それとも、私の未来を案じて逃げようとしたのだろうか。
今となっては、もう何も、わからない。
「つゆ...つゆ、つゆ、つゆ」
「...」
もはやどこを見ているのかわからないブツブツ母の名を呼ぶ男を見て失笑した。
ずっと前から壊れてたんだなあ。私と同じだ。
雫がぽたっと一滴頰を濡らす。
朽ち果てた廃寺の屋根はないものだと思ってもいい。瓦は落ちて、木は腐りかけている。
そんな夜空から見えるのはただの闇。
そこからポツポツ、ぽつと小ぶりの雨が降り続いていた。
「...あ」
私の仕掛け、もしかしたら使い物になって無いかもしれない。もしかしたら、火は消えてしまったかもしれない。
「...さっきまでの威勢はどうした?俺を殺す算段はついてたんだろ?なあ、なあ」
この男も私がのこのこ帰ってきたとは思ってなかったんだろう。だから見張りがてら手下たちを外に出させたのかもしれない。
床と頭がぴったり密着している。痛いのは嫌だけど、嫌で嫌でしょうがないけど。
「...それで勝ったつもり?」
「...つゆ?」
結んだ髪はいつの間にか解けて、床に無造作に散らばっていた。母譲りだろう髪は、背中まで伸びて縮れている。まるで男女の営みをしているみたいな体勢。
私、そんなにかあさんににてるのね。
「あんたがそんなに汚くて、気持ち悪いハゲでクズで無能でしょうもない男だから......、私はあの人の手を取ったのよ?それに______、
_____この私がお前を、選ぶとでも思った?」
男の顔は更に真っ赤に染まっていく。
私はすかさず片手に隠していた猫手を親指に装着させる。怒車の術には自信があった。
男は私の片目を殴った。そんな暴力でしか相手を屈服させられないのだから、馬鹿って言ってんじゃん。
(だから神様。最期の日ぐらい、綺麗な空、見せてくれたって良いじゃない)
ラッキーアイテム
革ベルト
ラッキーカラー
あずきいろ
おみくじ
おみくじ結果は「末凶」でした!
115人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
苺たると(プロフ) - 涙腺ゆるゆるにして見てました…。こういうネタ大好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます! (2020年6月29日 21時) (レス) id: 4ddd192ae6 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん(プロフ) - MadHatterさん» ありがとうございます!この小説を楽しみにしていただけたら幸いです!無理をせずゆっくり書いていきたいと思います! (2018年3月23日 18時) (レス) id: 4829cee081 (このIDを非表示/違反報告)
MadHatter(プロフ) - ボロボロ泣きながら拝読させて頂きました。続き楽しみにしております。無理だけはなさらないでください。 (2018年3月23日 2時) (レス) id: 17134202e7 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん(プロフ) - ざわさん» ありがとうございます。3月以降から本格的に更新を再開したいと思います。今回は生存報告としての今の現状とお話をあげさせて頂きました。引き続き応援よろしくお願いします。 (2018年2月12日 23時) (レス) id: 4829cee081 (このIDを非表示/違反報告)
ざわ(プロフ) - ドキドキしながら一気読みしてしまいました! この作品大好きです!素敵な小説をありがとうございます。受験はもうラストスパートでしょうか?お勉強頑張ってください!このコメントが届いているかどうかわかりませんが、心から応援しています...! (2018年2月6日 23時) (レス) id: c9576dec0e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かまぼこうどん | 作成日時:2017年7月3日 22時