さようなら。もしまた会えるなら ページ26
「...なーんて、冗談冗談」
にやけた曲者は私の目を見て、ぽんと手を私の頭に置いた。目はどこか哀感の色をしていた。
「...つゆって」
「なんのこと?」
ああ、もう本当、むかつく。パシッと頭に置かれた曲者の手をはたいた。私の手は避けられ、宙をかいた。
「なるほど、元気そうで良かったよ。じゃあ私仕事があるから、じゃあね」
代わりにこれ置いていくよ。そう言って曲者はた天井裏に戻ると、天井板をカタリと閉じて行ってしまった。
保健室には、私と、"お土産"だけが残された。
「ねえ伏木蔵、君曲者人形持ってなかったっけ?」
伏木蔵に渡されたお茶を飲む。程よい温度で飲みやすかった。
「はいー、...こなもんさんが来たんですか?」
伏木蔵が私の枕元を見て言った。私は片手でその人形の足を掴んで持ち上げる。
「このお土産の使い方、私サンドバッグぐらいしか思いつかないんなんだけど」
「...ええっ?えっ、あっ!」
すると伏木蔵は慌ててお盆を落とした。
「慌てすぎだよ。"冗談、冗談"」
ケラケラ笑ってお盆を拾う。あちゃーと顔を真っ赤にした伏木蔵は手で顔を隠していた。かわいい。
にしては、本当この人形目元が特に似ているし、ふわふわしているのが逆に腹たつ。
そのふわふわした曲者人形を伏木蔵の頭に乗っけてからかった。伏木蔵はもっと慌てて可愛かった。なんて後輩って可愛いんだろう。
そろそろかわいそうになってきたので伏木蔵の頭から人形を外して元の位置に置く。
「...男って、馬鹿なの多いよねえ」
独り言は、幸いにも伏木蔵には聞こえていないようだった。ことんと首をかしげる。
「...今何かおっしゃいました?」
「...気のせいじゃない?」
ふと外の方に目を向ける。
外は、朱色を水に溶かしたような、滲んだような淡い色の夕暮れだった。
(たとえ私の母がどんな人であろうと、私には関係ない)
《たとえ彼女が露の子であろうと、彼女には関係ない》
(けれど、なぜこんなにも悲しく思えるのだろう)
《けれど、なぜこんなにも愛しく思えるのだろう》
(私は、結局私なのにね)
《Aは、Aだというのに》
「未練を残したのは、どっちの方だ」
「すべて、私の独りよがりだというのに」
誰かが残した言葉は、夕暮れの中に静かに消えた。
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苺たると(プロフ) - 涙腺ゆるゆるにして見てました…。こういうネタ大好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます! (2020年6月29日 21時) (レス) id: 4ddd192ae6 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん(プロフ) - MadHatterさん» ありがとうございます!この小説を楽しみにしていただけたら幸いです!無理をせずゆっくり書いていきたいと思います! (2018年3月23日 18時) (レス) id: 4829cee081 (このIDを非表示/違反報告)
MadHatter(プロフ) - ボロボロ泣きながら拝読させて頂きました。続き楽しみにしております。無理だけはなさらないでください。 (2018年3月23日 2時) (レス) id: 17134202e7 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん(プロフ) - ざわさん» ありがとうございます。3月以降から本格的に更新を再開したいと思います。今回は生存報告としての今の現状とお話をあげさせて頂きました。引き続き応援よろしくお願いします。 (2018年2月12日 23時) (レス) id: 4829cee081 (このIDを非表示/違反報告)
ざわ(プロフ) - ドキドキしながら一気読みしてしまいました! この作品大好きです!素敵な小説をありがとうございます。受験はもうラストスパートでしょうか?お勉強頑張ってください!このコメントが届いているかどうかわかりませんが、心から応援しています...! (2018年2月6日 23時) (レス) id: c9576dec0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かまぼこうどん | 作成日時:2017年7月3日 22時