じわり、赤いおべべに染まっていく ページ12
ダメなのはわかっている。
いけないことだとは、わかっている。
諦めた方がよっぽど彼のためにも私のためにもなるというもの。
それなのに、私は愛してしまった。
願わくば、彼と寄り添い生きようと___。
ここから逃げ出して、二人で、共に生きたかった。
仕える主君を亡くし、いくら汚い行為に手を染めようと、嘲けられ神様に見捨てられようと、ここの男達と違う、その澄んだ綺麗な瞳に惹かれた。
"私は、人の心は捨てない。人生を諦めない。"
彼はそう言って笑った。私も、彼の前では笑えた。
彼の、笑った顔が大好きだった。
契りを交わした。"ここから逃げ出すんだ"って。
私は、彼の言う通り麓の地蔵の前で待っていたのに。
けれど何故、何故、何故何故?
(彼が、死ななければならなかったの?)
動かない彼の亡骸を見て、ただただ泣くことしかできなかった。悔しかった。憎かった。絶望した。
貴方を置いて、私とこの子は、どう生きて行ったらいいの。喋って。ねえ、いつもみたく笑って頂戴。
腹を撫でる。彼の魂が、我が子に宿る事を願って。
それから何カ月も経って、昼も夜も関係ないところに閉じ込められた。
腹は大きく膨らんだ。きっと、彼の子だ。あいつの子供なんかじゃない。私にはわかる。私の腹には、彼の魂がいる。今こうやって生きている。
今は昼間だ。あいつが帰ってきたら、また私はひどい仕打ちを受けるのだろう。
(この子のためにも、私が、強くあらねば)
大切なA。A。A。
お願い。これから生まれて来る所は貴方にとって辛い所だ。けど、強く生きて、幸せになってほしい。ここから逃げ出して、自由になって。
くノ一として生きてきた人生は碌なものではない。城が滅んだ時から、ただの女に成り下がった。
タソガレドキ城は今も勢力を伸ばし続けている。数年後には広大な領地を手にした城になるだろう。
あの時皮肉にも自分と対峙した知り合いは、今もどこかの城の諜報活動でも行なっているのだろうか。
恩義に厚い奴のことだろうから、きっと部下の為に傷を背負うんだろうな。
「忍者は辛いから、間違えても忍者になったりするんもんじゃないよ」
楽しかった頃を思い出して笑った。
そして、彼女が5歳になった満月の日、私はAを連れて逃げ出した。
身体にガタが来ている。手負いの女と子供の足でどこまで遠く逃げられるだろう。
神様、どうかこの子に、希望を与えてください。
私はもう、長く生きられないのです。
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苺たると(プロフ) - 涙腺ゆるゆるにして見てました…。こういうネタ大好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます! (2020年6月29日 21時) (レス) id: 4ddd192ae6 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん(プロフ) - MadHatterさん» ありがとうございます!この小説を楽しみにしていただけたら幸いです!無理をせずゆっくり書いていきたいと思います! (2018年3月23日 18時) (レス) id: 4829cee081 (このIDを非表示/違反報告)
MadHatter(プロフ) - ボロボロ泣きながら拝読させて頂きました。続き楽しみにしております。無理だけはなさらないでください。 (2018年3月23日 2時) (レス) id: 17134202e7 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん(プロフ) - ざわさん» ありがとうございます。3月以降から本格的に更新を再開したいと思います。今回は生存報告としての今の現状とお話をあげさせて頂きました。引き続き応援よろしくお願いします。 (2018年2月12日 23時) (レス) id: 4829cee081 (このIDを非表示/違反報告)
ざわ(プロフ) - ドキドキしながら一気読みしてしまいました! この作品大好きです!素敵な小説をありがとうございます。受験はもうラストスパートでしょうか?お勉強頑張ってください!このコメントが届いているかどうかわかりませんが、心から応援しています...! (2018年2月6日 23時) (レス) id: c9576dec0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かまぼこうどん | 作成日時:2017年7月3日 22時