28:亜麻色と紫紺色と ページ28
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「なーんてな。冗談だよ、冗ー談。」
首筋に近づけたはずだった沖田の顔はそのまま通り過ぎ、私の耳元付近に寄せた。
「…え?どれが冗談?」
真顔で答える私に、沖田は自分の首を指す。
「何って、キスマークに決まってんだろィ。
ありゃ冗談。アメリカンジョークでさァ。」
どこがアメリカン?
突っ込みどころ満載な沖田をスルーして、私は小さく息を吐いた。
「でも−」と沖田は言葉を続ける。
私は、やけに重たい首輪をいじりながら、目だけは沖田の方に向けた。
「そんな反応見せるたァ…お二人とも、そういったご関係でィ?」
ニヤニヤ笑う沖田。
私は沖田から少しだけ目をそらして、小さな声で「違う。」と答えた。
*
「ただいまー。」
と声をかけ、帰宅したマンション。
リビングからはテレビの音が漏れ、晋助がそこに座っていることがすぐに分かった。
「…今日は随分と早かったな。」
そう言いながら、私の前に歩み寄る晋助。
ワインレッドの開襟シャツに学校指定の黒いスラックス姿を見て、私は顔を上げた。
「…今日、学校に来てたの?」
私の質問に、晋助は「あァ」と返す。
そして冷蔵庫へ向かうと、ヤクルトを取り出してそれを飲んだ。
「そっか、珍しいね。」
私はカバンをソファの端に置き、晋助の隣に立つ。
晋助はそんな私にちらりと目を向けると、そっと頭を撫でてくれた。
「Z組で噂になってたぜ。…沖田とAのこと。」
「(え!?もしかして、ポチって呼ばれてるのばれてる!?)」
ヒヤッとする私を余所に、晋助は長い前髪をくしゃっと握る。
そして、私と目線を合わせるように少しだけかがんだ。
「…A。
−どこにも、行かないでくれ。」
切なげに揺れる、晋助の瞳。
あまり笑うところを見ないから、その微笑は脳裏に焼きつくほど印象深い。
「晋助。…私はどこにも行かないよ。」
一瞬だけちらついた亜麻色の幻想に、私は蓋をした。
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クルルモンキー - クッ!敵わぬ!どうしても鼻血がッ! (2018年7月24日 21時) (レス) id: 5f81d4602a (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - narutokun0531さん» ありがとうございます!これからもっとドSっぷりを披露していきますね! (2017年9月11日 1時) (レス) id: ceb1c5f540 (このIDを非表示/違反報告)
narutokun0531(プロフ) - すごく面白いです、総悟のドSっぷりがたまりませぬっっ!! (2017年9月9日 0時) (レス) id: b0e0a6ed6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜月 | 作者ホームページ:https://twitter.com/sakura_duki3
作成日時:2017年9月3日 20時