24:届いて欲しい何か ページ24
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「(…あ、そういえば晋助に封筒渡してなかった。)」
あの後、晋助は私を抱きしめたまま眠ってしまい、結局封筒を渡せなかった。
作ったばかりの朝食にラップをかけてテーブルに並べた。
そして見えやすい場所に、その茶封筒を置く。
「行ってきまーす。」
きっと、まだ寝ているだろう晋助に声をかけて、そっと家を出た。
*
「おィポチ。とっとと弁当寄越しな。」
会って開口一番、沖田はイヤフォンを外しながら手を出す。
この間のことと言い、神経の図太さはもはや賞賛するレベルだ。
「…ほら。」
それでも、律儀に作ってしまうのは何故か。
「こりゃまた、随分と従順になった犬コロだな。」
沖田はそう言うと、いつもと同じように髪の毛を撫でる。
そしてお弁当をバッグに詰めて、お礼も言わずにスタスタと歩き出した。
「おーおー。ポチは総一郎くんにお熱かい。
高杉のことは遊びだったのか?」
背後から声をかけられ、思わず肩が跳ね上がる。
振り向かなくても、イチゴオレ味のキャンディの香りで誰か分かった。
「おはようございます、税金ドロボー。
あと、私はポチじゃないです。」
「おはよーさん。犬コロ。
あと、俺は税金ドロボーじゃねぇ。」
挨拶を交わし終えると、銀八先生は小さく息を吐く。
そして、ガシガシと髪の毛を掻いた。
「んで、高杉くんに例の茶封筒渡してくれた?」
私はコクリと首を縦に振る。
銀八先生はその答えに満足したのか、私の肩を手でポンと叩いてスタスタと歩き出した。
「…ここにいるドSコンビは、お礼も言えない奴らなの?」
呟いた文句は虚空の彼方へと消える。それと同時に鳴るチャイムの音。
私は慌てて階段を駆け上り、自分の教室へと向かった。
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クルルモンキー - クッ!敵わぬ!どうしても鼻血がッ! (2018年7月24日 21時) (レス) id: 5f81d4602a (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - narutokun0531さん» ありがとうございます!これからもっとドSっぷりを披露していきますね! (2017年9月11日 1時) (レス) id: ceb1c5f540 (このIDを非表示/違反報告)
narutokun0531(プロフ) - すごく面白いです、総悟のドSっぷりがたまりませぬっっ!! (2017年9月9日 0時) (レス) id: b0e0a6ed6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜月 | 作者ホームページ:https://twitter.com/sakura_duki3
作成日時:2017年9月3日 20時