子供のまま、痛いまま【吉沢亮】 (ページ40)

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持っているクラスでは特に大きな問題や喧嘩も無く、平和に毎日が流れていた。
部活もあれから新入部員が入ってきて、部員同士で教えあったりして少しずつ上達している。

かなり充実している、そんな五月の半ば。

私達は今、飛行機の中。

『うるさくなるかと思ったけど…』

「案外静かでしたね」

偶然席が隣になった、山﨑先生と話していた。
生徒達が機内で騒ぐ声は聞こえなくて、小さな話し声が時々聞こえるくらい。

高三ってこんなに大人しいっけ？
私達のときは、修学旅行なんてはしゃぎまくってた記憶があるんだけどな……

やっぱり信じられない。
生徒たちは後ろの方に座っているから、座席からこっそり覗いてみる。

『…あ』

寝てる。
ほぼ全員寝てる。

いつもより幼い寝顔になんだか微笑ましくなる。
山﨑先生も気付いたみたいで、こっちを振り返って柔らかく笑った。

『皆、意外とかわいい寝顔ですね』

「ふふ、いつもあんなに騒がしいのに」

やっぱり疲れてるんだな、と思って、私も目を閉じた。

あ、結構寝れるかも。

いつの間にか、深く眠りについた。

目を開けると、周りが少しガヤガヤと騒がしくなっていた。
全員起きたんだ、と話し声で気付く。

自分の隣を見ると山﨑先生は俯きながら寝ていた。

先生も疲れてるよな……

私達は職業柄、普段寝不足になりがちだから、起こさないように静かにしておこう。

『シンガポール、着いた……』

目の前には、シンガポールの代名詞とも言えるマーライオンが。
これを見て改めてそう実感した。

班行動になってから一緒に来た生徒たちがたちまち目を輝かせて走り出す。
男子生徒が口から水を吐き出しているみたいにポーズをとったりして、定番の写真を撮りまくった。

「先生、次ここ行こ！」

『よし、行くぞー！』

手づくりのパンフレットを指差しながら班の中の一人がそう言う。
テンションが上がった私も乗り気で、腕を引かれながら歩き始めた。