片 道 1 5 8 分 の 恋 物 語 。【青】

多度津駅 ページ6

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安「なぁなぁゲームしよやっ」

「ゲーム？」

もっと距離縮められへんかな、って考え抜いた末の苦肉の策。


安「最近ハマってるゲームあるねん」

「どんなゲーム？」

安「ちょお待ってなぁ」


おれはポッケから携帯を取り出してアプリを開く。


安「これ。絵しりとりゲーム」

「ふふ、絵しりとり好きなの？」

安「最近楽屋でメンバーともやるんよ」

そう言うたら目をキラキラ輝かせておれのことを見てくる。

…そうや、Aちゃんはエイターさんなんや、ってまた実感。


安「ほら、これ二人でできるねん。
制限時間あるから気をつけてな？
よし、おれから描くでっ」

「っうん」

絵しりとりで、なんか距離縮まればええなっていうほんの少しの期待を抱きながら、
携帯の小さい画面に"リス"を描く。

安「よし、描けたっ
次Aちゃんな」

そう言うて、自分の携帯を手渡す。


その時

ほんまちょっと、手が触れた。


「っぁ…」

それに反応したんか、ビクッと震えたAちゃんの手からするり、と携帯が滑り落ちる。

「っ！
ご、ごめん…なさい…」

安「ううん、大丈夫やで！
ほら、Aちゃんの番やから！
時間切れなっちゃう、笑」

おれは落ちた携帯を拾ってまたAちゃんに手渡す。

次は、触れへんように。




…あかん、
おれもドキドキしてもうた。

手がちょっと触れただけでこんな恥ずかしくなるなんか…おかしいよ、どしたん自分。

まるで初恋の頃に戻ったみたい。


「描け、た…」

次も触れへんよう気をつけて携帯を受け取る。


…ほんまは触れたいけど、Aちゃんのこと困らせたくないもん。
またAちゃんがおれに遠慮しちゃうから。



帰ってきた携帯の画面には輪郭がギザギザしてる"スイカ"があった。

…もしかして手震えてたからこんなギザギザになってるん…？

え、待って、それは可愛すぎひん？

思わずスクショを撮ってしまう。
Aちゃんは気づいてないみたい。セーフ。


こんな可愛いスイカ見たことないって…


おれは可愛いスイカから目が離せへんまま、なんとか"カモメ"を描く。

またそれをAちゃんに手渡して。


「…ヤスくん、絵うますぎ」

少し膨れるAちゃんを見て笑いが溢れる。





絵しりとり一つでこんなに楽しめるんめっちゃ素敵やん。





［09:44 多度津駅］





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