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素直にすごいって思った。
同じ歳なのにちゃんと自立していて、私よりずっと大人に見えた。
「すごいです」
岩本「え？ いや、すごくないよ」
「私なんてアルバイトの経験もないですし、出来る自信もなくて……。前にアルバイトしたいって親に言ったことがあるんですけど、勉強との両立が出来るのか、途中で投げ出したりしないかとか……」
親に色々言われた時に、すっかり自信をなくしてしまった。
「昔から私、中途半端なんです。習い事のピアノも、水泳も、そろばんも途中で諦めちゃったし……大学受験も第一志望は落ちて滑り止めで受けたここの大学を……」
はっとして口を噤む。
こんな話、誰が聞きたいだろう。
「ご、ごめんなさいっ！ こんなの聞かされても、困りますよねっ……」
振り返ると、岩本さんが私をじっと見つめていて息を飲んだ。
怒ってる……？
その真剣な目つきに、少し肩をびくつかせた。
岩本「また我慢してる」
「え……？」
岩本「それ、悪い癖だろうな」
小さな溜息が聞こえてきて、なんだか胸がぎゅっと苦しくなる。
ああ、呆れられたんだろうな……。
岩本「Aさん、やりたいことも言いたいことも我慢すんなって。中途半端に投げ出したのは過去のことだろ。これから頑張ればいいじゃん」
「……、」
岩本「いつでも変われるよ」
ふわりと優しい目つきに変わった彼に、勇気づけられる。
不思議だ、昨日会ったばかりなのに。
この人は私の欲しい言葉を、くれる。
岩本「どんなバイトに興味あんの？」
「えっと、本屋さんとか……あっ、映画館のスタッフにも興味あります」
岩本「ああ、どっちもAさんに似合いそうだよ」
「……私、もう一回親に言ってみます」
説得して、今度こそ変わりたい。
自分にもっと自信を持てるように、頑張りたい。
岩本「ん、応援してる」
彼の期待に答えたい、という気持ちも僅かに芽生えていた。
……それに気付くのは、少し後のお話。
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作者名：ななせ | 作成日時：2024年3月10日 17時
