【深夜2時】/E ページ12
『起きてる？』
夜も更けた、深夜2時。
どうにも寝付けなくて、しかも少し気分が落ちているという、どうしようもない時間を過ごしていた。
｢(‥‥‥‥やっぱり寝てるかな)｣
ダメもとで送ってみた、えおえおへのメッセージ。自称おじいちゃんの彼のことだ、とっくに寝てるだろう事はわかっていた。
どうしよう。お酒でも飲んで、無理矢理寝てみようか。明日仕事だけど。
いやでもとりあえず布団に入ってみよう。音楽でも聞いてればそのうちころっと、
ぴろん。
｢‥‥！｣
ばさりと布団をめくった所で、ケータイが鳴った。
テーブルに置いたケータイにあわてて飛びつく。
『どした』
短いものだったけれど、えおえおからの、返信だった。
少しだけ胸が熱くなって、きゅっと、唇を噛む。
『起きてたんだ、夜更しはだめだよ笑』
送ってから気づく。何故か無駄に上から目線になってしまった。ほんとは構って欲しくて仕方ないんだけど、えおえおも眠いだろうから。
すぐに既読が付く。
『Aこそ。明日仕事でしょ』
『うん、なんか眠れなくて』
『なんかあった？』
『いや、特に何も無いよ』
彼は優しい。
これ以上やりとりすると、もしかしたら余計な心配をかけてしまうかもしれない。
『返事くれてありがと、ゆっくり寝てね』
丁度返信が途切れたので、そう送ってみる。
すると。
ぴろぴろぴろん。
｢！｣
返事はメッセージではなく、電話でかかってきた。
ごくりと息を飲んで、通話ボタンを、押す。
｢‥‥‥‥もしもし｣
『‥‥やぁ』
｢‥‥ふ、ふふ｣
『‥‥なに笑ってんの』
｢だって、‥‥やぁって、っ、｣
予想外の切り出し方に笑ってしまった。
今どき『やぁ』って。英国紳士か。
｢‥‥なんか心配かけてたらごめんね。ちょっと眠れなかっただけだから、わたしは大丈夫だよ｣
『‥‥おう』
低くて優しい声に、胸が満たされていくのを感じる。
｢‥‥えおえお、ありがとう｣
『‥‥なんもしてねーけどな』
｢‥‥すき｣
『‥‥おう』
次のデートは、もう決まってるから。
寂しいけど、今から来てなんてわがまま言えるほど若くもないし、ちゃんと、我慢する。
｢えおえおが夢に出てきたらいいな｣
『‥‥いつでも行きますよ』
｢ふふ、ありがと｣
『‥‥寝れそ？』
｢おかげさまで｣
『なら良かった』
電話越しに、少し、微笑んでくれた気がした。
『おやすみ、A』
良い夢を。
END
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作者名：こばやし
| 作成日時：2017年9月24日 11時
