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第21話 ページ21

「‥‥‥‥」

瞼が、重い。

窓から差し込む朝日は、さんざん泣き明かした後のわたしには、少しキツすぎた。


「‥‥‥‥わすれて‥‥‥‥」


掠れた声で、祈るように天井を仰ぐ。


忘れたい。忘れたいんだよ。


でもね、うまくいかない。


「‥‥‥‥」

起きてすぐ、あろまが浮かんだ。
歯磨きしてても、ご飯を食べてても、寝る時でさえ、あろまがずっとココにいる。


なんで、あんなキスしたの。

忘れろなんて言いながら、なんで抱きしめたりしたの。


「‥‥‥‥余計‥‥、つらいよ、‥‥っ」


枯れたと思った涙が、またとめどなく溢れてくる。



やだよ。

いかないでよ。

あろま。

おねがいあろま。




だきしめてよ。



あろま。



あろま。





ピンポーン。


「‥‥‥‥、」

突如鳴り響いたインターフォンに、はっとする。
熱くなっていた頭がスッと冷えて、垂れ流しだった涙を慌てて拭った。

「‥‥(‥‥だれ‥‥)」

宅配便かな。でも何も買い物してないし。

うまく回らない頭で考える。

いいや。居留守しよう。
こんな顔じゃ出れないし、そもそも誰にも会いたくない。

寝返りを打って、強く枕に顔を埋めた。



ブー、ブー。


「‥‥」

今度はケータイが鳴る。

のろのろと画面を確認すれば。


「‥‥‥‥‥‥きっくん」


いつも笑顔をくれる、友人からだった。


「‥‥もしもし」

通話ボタンを押し、なるべく鼻声がバレないように、口を開く。

『‥‥‥‥‥‥泣いてたの?』
「‥‥‥‥‥‥」


ソッコーバレた。


「‥‥ご用件をどうぞ」
『‥‥‥‥今、Aんちの前にいるんだけど、出かけてる?』
「‥‥ごめん、今、あんまり‥‥人に会える顔じゃない」

やんわりと。
でも、素直にそう言えば。


『どんな顔でもいいよ。Aに会いたくて、来た』


そんな答えが返ってきた。

もう。恥ずかしげもなく、よくそんな事言えるなぁ。

「‥‥笑わないでね」
『‥‥最善を尽くそう』
「さよなら」
『うそうそ!うそだから!開けてよぉ!』

必死な声に、思わずふふ、と笑ってしまった。

やっぱりきっくんはすごい。どんな時でも、笑顔をくれる。


「顔洗うから、ちょっとだけ待ってて」
『外暑いからなるべく早くしてね』
「ふふ。わかった」


通話を切り、立ち上がる。
さっきまでのだるさが嘘のように、その足取りは軽やかだった。


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xjythtphs1213(プロフ) - こばやしさん» 返信ありがとうございます…! いやいや、読んでて楽しめます!!eさんのフェチの話も読んだんですが、素直にキュンとしました… もうこばやしさんのセンスが大好きです゚(゚`ω´ ゚)゚ (2017年8月22日 21時) (レス) id: ab8a07239c (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - xjythtphs1213さん» コメントありがとうございます!もったいないほどのお言葉でございます……!!作品数もそこそこありますので、無理はなさらぬよう、お楽しみ頂ければ幸いです!ありがとうございます、頑張りますっ!! (2017年8月20日 23時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
xjythtphs1213(プロフ) - 読むのが止まらなくて、秒で読んでしまいました…!至る所で、言葉や表現にドキッとしました!とても面白かったです!こばやしさんの小説、全て見ます(*゚v゚*) (2017年8月20日 13時) (レス) id: ab8a07239c (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - しにゃもん(`・ω・´)さん» コメントありがとうございます!なんとか無事完結いたしました……笑 意外とこういった暗めのお話もお楽しみ頂けるようで安心いたしました!!次の小説も頑張ります‥‥!!(´;ω;`) (2017年8月10日 2時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
しにゃもん(`・ω・´)(プロフ) - めちゃくちゃ面白かったです!完結お疲れ様でした!最後の方は本当に涙が止まらなかったです…! (2017年8月4日 10時) (レス) id: 23db386b10 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こばやし | 作成日時:2017年7月25日 22時

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