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イントロが流れる。
私はステージに駆け上がった。
この衣装ブロックは衣装に重きがある。
だから、パフォーマンスよりも、
ランウェイみたいな形で衣装を見せることを
重視していた。
でも、サヨナラの意味はどうしても
しっかりパフォーマンスしたかった。
どの曲も同じ大切な曲。
そして誰かのラストシングルは特にそう。
姉の卒業曲だったらもっとそう。
ダメ元で頼んだらOKが出て、
しっかりパフォーマンスすることに。
自分で提案したくせに…
いざその場に立つと震えてしまう。
この歌の重みと衣装の重み。
小刻みに震える手。
何故か大好きな姉の
そのポジションに立ったら消えていた。
___電車が近づく
___気配が好きなんだ
___高架線のその下で耳を澄ましてた
出だしはソロ。
震えてしまうと思っていた歌い出しは、
難なく歌うことが出来た。
___柱の落書き
___数字とイニシャルは
___誰が誰に何を残そうとしたのだろう
大好きなくぼしたが歌いながら出てくる。
史緒里にこの衣装を着ることを伝えた時、
喜んでくれたんだ。
そんな史緒里は歌いながら頭を撫でてくれる。
今後のことを知っているからこそ、
この歌にはくるものがあるよね。
一方の美月はニコニコしながら歌ってる。
この笑顔を崩したくないから、
美月には今後のこと、やっぱり伝えられなさそう。
ごめんね。
真反対のようでそんなことない、
常に同じ方向を向いているくぼした。
貴方たち、やっぱり最高のシンメトリーだね。
.
.
___守りたかった愛に代わるもの
気がついたらもう曲の終わりで…
その歌詞と共に左目から涙が零れていた。
すーっと、1滴だけ。
お姉ちゃん、見ててくれたかな。
ちゃんと受け継いでいけたかな。
やっぱりずっと、橋本奈々未は伝説です。
ありがとう。
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作者名:ニノン | 作成日時:2021年9月29日 12時