海辺に咲いた花 NS (ページ6)

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潮風の思い出ページ6

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N side.

帰り道、夕焼けに照らされた俺らと自転車の影が伸びていく。

肌で感じる潮風が心地いい。
翔ちゃんのさらさらな髪が俺の首にあたって、若干くすぐったいけど。

綺麗だね、と翔ちゃんが呟いた。
それはきっと夕日に照らされた海のこと。

一面をオレンジに染める夕日は、暗くなった海に沈んでいく。

「ねぇ、翔ちゃん」

「ん？」

「俺さ、ずっとこんなことしてたい。
この先も翔ちゃんと…こうやって」

「……うん、ねぇにの。
失くしたくないものってさ、俺はやっぱりあると思う。」

いま、昔のことを思い出していた。

小さい頃からどこか冷めていた俺は
宝物だとか誰かとの思い出なんて、自分には必要ないと思っていた。

失くしたくない程大切なもの
そんなものはきっと存在しないから。

そう口にした俺に
翔ちゃんは、あるよと言った。

きっと彼は、その頃から分かっていたんだ。
俺よりも多くのことを。

いま、後ろに乗せた翔ちゃんが
この瞬間なにを思っているのか、俺には分からない。

だけど、これだけは分かる
この時間が永遠に続くことなどないと。

大人になる一歩手前の、最後の大切な期間。

もう17にもなったけど
こんなことでも毎日それなりに楽しいよ、俺は。

翔ちゃんはどう？

この時だけは、翔ちゃんを遠くに感じた。

彼の中ではきっともう、未来が見えている。

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