第37話「沈め、沈めと手を伸ばし」 ページ37
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べしゃ!と落ちた先は暗闇。
一寸先もどこまでも闇。
尻から落下したため「いってぇ〜」と呻きながら上半身を起こす。
「………えっ。何処、ここ」
マジな感じの、本当に光が一切無い闇。
普通に分からない。なんだこれ、夢かな。
「お坊ちゃまーーっ!!大丈夫で、ぃい"っ!!」
脇腹に強烈な痛み。
あまりに突然のことに蹲り、脇腹に手をやる。
不自然な凹みと、手に何かが付着した感覚。
「は?」と間抜けな声を上げれば、またあの気味の悪い気配に包まれた感覚がした。
ただただ意味の分からない痛みが体中を襲う。殴られた時より数倍痛くて、巨大なハチに刺されたようなそんなのが、全身に。
指を力尽くで捥ぎ取られた感覚に悲鳴を上げた。
「こっ、の、!!!」
先すら見えない闇。
地獄を体験してるのだろうか。
理不尽な世界を前にあまりに自分が無力だと知った今、心の底から湧き上がる感情に従い口を開く。
途端に口からごぼりと何かを吐き出した。視覚が機能しなくても分かってしまった。口に広がる鉄の味。
ただただ苦しい。そして痛い。何で私がこんな目に、どうして。
「お、っぉ……ゃ……」
体が崩れ落ちた。
何も理解ができなかった。
遠くで誰かの笑い声が聞こえたような気がした。
………
……
…
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「ありゃあ死んだな」
不明な力に引き摺り込まれたかのように地に沈んだ少女を見て、彼は呟いた。
_____不要な娘を殺す計画が実行された。
権力に固執し、理解し難い不安要因に無意味な程怯え、邪魔な障害は歓んで切り捨てる。トチ狂った思想だけが存在する掃溜へ好んで住む臆病な老人たちはきっと、今か今かと待ち望んでいる事だろう。
お払い箱である娘が死に、大切な次期当主様が目を覚まし、そして己が心から安堵出来るその時を。
「変わんねえな、今も昔も」
重い腰を上げた。面白いものが見れそうだと気紛れに来てみればこれだ。
六眼のガキは娘を血眼になって探している。尋問しようとした男はガキを嘲笑うかのように目の前で自刃した。
呪いを込めて死んだのであれば、きっと娘は今頃。
「ま、俺には関係の無い事だ」
呪力が無いと蔑まれ、人として扱って貰えぬ家畜のような人生。
クソみたいな世界の中で崇め奉られていたあのガキの精神は粉々に砕けただろうか。
愉快だ。心の底から思う。
お前も一度、地の底で上から光を譲受させられる気持ちを味わってみろ。
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ツナ(プロフ) - 話しの内容がすごく好きでした (2021年1月2日 20時) (レス) id: 60d9289c8a (このIDを非表示/違反報告)
腐りかけの果物(プロフ) - どうもこんばんは、見直してたら腐りかけの林檎が出てきて改めて私の名前と一致かと思いましたが私の場合果物でした (2020年12月8日 20時) (レス) id: 4dd29108fd (このIDを非表示/違反報告)
なて(プロフ) - 給料どんどん減ってくの好きです。 (2020年12月7日 19時) (レス) id: e2a15ae5f0 (このIDを非表示/違反報告)
ことこと - もう、pixivで書いてきたらどうですか・・・ (2020年12月2日 17時) (レス) id: 360ee8aa85 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 一章完結おめでとうございます!!最後泣きました!2章がどうなっていくのかが楽しみです!! (2020年11月22日 15時) (レス) id: af1bba7450 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nny。 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年11月15日 10時