第30話「君のおかげ」 ページ30
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「悟お坊ちゃま、車、え?あれ、帰りたくない感じ?」
「俺が帰らなかったら明日お前の周りが愉快な事になってるだろうけど、それでも良いなら俺は別にお前とここに残っても良いぜ」
「帰ろう。帰りましょう悟お坊ちゃま、帰る手段失われたけど帰ろう。負んぶしてあげるから」
「手」
「ワン」
…………あっ。そうだ!悟お坊ちゃまには瞬間移動がある。
普通に忘れてた。何で忘れられるんだろう不思議。車が無くなったのはつまり、お坊ちゃまが車だけアッチに飛ばしたってことか。
「思い出せたか鶏頭」
「へへ、運転するプレッシャーで一切合切忘れてました」
「お前ほど生きにくい人間いないだろーな」
「いや〜、そんな事ないですよ。確かに私は馬鹿だけど、それでも楽しく過ごせてます。こうやって海に来られたのもスゲー良かったし。悟お坊ちゃまのおかげです」
えへへと笑って、悟お坊ちゃまに笑顔を向けた。
君がいなかったら多分今頃、あの屋敷の中でずっと掃除やら炊事洗濯やらやってただけだろうな。
いびられまくるのはアレだけど、こういう体験出来たのは君のおかげだ。
「昔は正直めちゃくちゃ嫌でしたけど、今は割と、悟お坊ちゃまの専属メイドになれて良かったって思ってます」
海を見た。夕日が向こう側へ消えかけている。
実はあの太陽も海の中に沈み、地面を突き破って反対側へ移動してるんだって最近まで思っていたことは黙っておこう。
「今日は楽しかったです。ありがとうございました。
また、色んなところ行きましょうね」
なるべく近辺で。
いやでもお坊ちゃまの力があれば遠くへも行けるか?
悟お坊ちゃまと向き合い、頭を下げて礼を言う。
色んなところ行くなら今度から運転手つけてほしいんだけどね、正直に言って。
悟お坊ちゃまは少しの間そんな私をジッと見ていたが、不意に目を逸らした。
「……そーだな。今度は北極にでも行くか」
「近辺どころか日本ぶち抜いてんじゃん」
そんなとこまで行けるのお坊ちゃま??好奇心は何ちゃらとか言いますけど、自分の身を滅ぼすだけでは??
手を差し出されたのでいつものようにぎゅっと掴む。
「約束ですよ」と言えば、彼は「そーだな」と適当に返す。
そして、お坊ちゃまはこちらを見た。形の良い口が開く。
「俺も、割と楽しかったよ」
そんな呟きを残し、私達は海岸から姿を消した。
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ツナ(プロフ) - 話しの内容がすごく好きでした (2021年1月2日 20時) (レス) id: 60d9289c8a (このIDを非表示/違反報告)
腐りかけの果物(プロフ) - どうもこんばんは、見直してたら腐りかけの林檎が出てきて改めて私の名前と一致かと思いましたが私の場合果物でした (2020年12月8日 20時) (レス) id: 4dd29108fd (このIDを非表示/違反報告)
なて(プロフ) - 給料どんどん減ってくの好きです。 (2020年12月7日 19時) (レス) id: e2a15ae5f0 (このIDを非表示/違反報告)
ことこと - もう、pixivで書いてきたらどうですか・・・ (2020年12月2日 17時) (レス) id: 360ee8aa85 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 一章完結おめでとうございます!!最後泣きました!2章がどうなっていくのかが楽しみです!! (2020年11月22日 15時) (レス) id: af1bba7450 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nny。 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年11月15日 10時