第29話「じゅつしき」 ページ29
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「そんな良いもんじゃねーな、海も」
お坊ちゃまは海の向こうをジッと見てそう呟いた。
お坊ちゃまの顔を下から覗き見て、私も同じ方向を見る。
海も綺麗だけど、やっぱり悟お坊ちゃまの目の方が綺麗な蒼色。
「実は私、ゲームの影響で最近まであの海の先は実は崖になってて、こぼれ落ちた海水は全部ブラックホールへ流れ落ちてくみたいな事を本気で信じてました」
「そう思っときゃ良いんじゃねえの」
「何で急に突き放すようなこと言うの」
その言葉に悟お坊ちゃまはようやくこちらを見た。
「お前はずっと、そのままでいろよ」
「………その心は」
「馬鹿の方が扱いやすい」
「私、漢検四級受けようと思ってるんですけど」
「小6レベルかよ」
「馬鹿さは何ら代わりねーから勝手に取ってこいよ」と悟お坊ちゃまは宣う。ちょっとだけ笑ってるように思えるが気のせいだろうか。
「悟お坊ちゃま、私が行きで時間かけ過ぎたからかもしれませんけど、門限の方がマズイです」
夕日を見て思い出した。
これ、帰る時間考えたら間に合わなくない？
悟お坊ちゃまは知らんぷりである。ずっと海を眺めている。お坊ちゃまが動かない限り、お坊ちゃまのすげー空間の中にいる私も無闇に動く事が出来ない。
つまり詰んだってことだ。
「お前って1日で記憶が初期化されんの？」
「そんな事はないです。昨日の夕飯はシイタケでした」
「そりゃ今日の朝も昼もシイタケだったからだろ。つーかマジでシイタケ食ってんのかよ、狂ってんなお前」
「あなたの めいれい ゼッタイ わたし シイタケくう」
「従順過ぎんのも気持ち悪りぃな」
お坊ちゃまはようやく歩き出した。置いてかれたら海へ真っ逆さまなので慌てて追いかける。
海岸には誰もいなくなっていた。見られなくて良かった超常現象。
悟お坊ちゃまは車の前まで来ると、車の周りに何かを書き始めた。指で何かを描いてるように見えるけど何も分からない。故に注意して良いのか悪いのか。
「砂場で書いた方が良いのでは」
「………」
とうとう無視された。
いつもだったら何かしら(めちゃくちゃ面倒くさそうにしながらも)反応してくれるのに。
車の周りを一周し、悟お坊ちゃまは立ち上がるとぱん、と手を合わせた。
その瞬間、車が消えた。
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ツナ(プロフ) - 話しの内容がすごく好きでした (2021年1月2日 20時) (
レス) id: 60d9289c8a (このIDを非表示/違反報告)
腐りかけの果物(プロフ) - どうもこんばんは、見直してたら腐りかけの林檎が出てきて改めて私の名前と一致かと思いましたが私の場合果物でした (2020年12月8日 20時) (レス) id: 4dd29108fd (このIDを非表示/違反報告)
なて(プロフ) - 給料どんどん減ってくの好きです。 (2020年12月7日 19時) (レス) id: e2a15ae5f0 (このIDを非表示/違反報告)
ことこと - もう、pixivで書いてきたらどうですか・・・ (2020年12月2日 17時) (レス) id: 360ee8aa85 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 一章完結おめでとうございます！！最後泣きました！2章がどうなっていくのかが楽しみです！！ (2020年11月22日 15時) (レス) id: af1bba7450 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Nny。
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年11月15日 10時
