2……兄者さんside ページ8
いつから。なんて覚えてないけど、ゲームをしてない時は気づけば歌を探している。
そんでいい歌を見つけてはAに聞いてもらう。
聞いてもらった後のAの顔は、いつも怖いくらい優しい。
「……兄者さんは、過去に付き合った人の中で忘れられない人っているの?」
「いないって言ったら嘘になるな」
「……そう」
至極興味なさそうに返事をするAの顔は、とても慈愛に満ちていた。
「……なあ、今なに考えてんの?」
「んー、特には考えてないですよ」
とても優しく笑うその顔に、嘘なんて一言も書いてないのに、それが嘘だって思うのは、あいつの影がAに見え隠れするからか。
「……泣きそうな顔ですね」
どこか怒ったようなAの声に、意識を浮上させる。
誰だって、好きな人が目の前で物思いに耽ってたら怒るよな。
この日は、そんな軽い気持ちでごめん。なんて謝ってAは機嫌を直してくれた。
でも、事実はそんなに甘くはない。
その日を境に、ぱったりとAからの連絡が途絶えた。
「……まあ、あんなに未練たらたらで目の前にいるだけでも腹立つのに、さらには前の彼女にしてたことをAにもしてりゃ、そりゃあ腹も立つよね」
「うんうん」
「……でも好きなんだよ!Aも!」
「そんなんAから見たら二股かけられてるようなもんじゃん」
いつもは優しいおっつんでさえ怒っている。
弟者に至っては一言もしゃべらなくなる始末。
それほど俺は酷いことをしてるんだ。
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作者名:nnanjokei | 作成日時:2018年4月4日 15時