安易な考え ページ27
カレンダーが示すは8月、もうすぐお盆。
どこの会社も予定通りの休みに入りたいがために無茶な注文が殺到する時期であり、仕入れ担当が泣く時期である。
私が働く会社も仕入れが主なため例外なく、休みを返上して出張やら買い出しに走り回っていた。
そんな大仕事がようやっと大詰めに入り、何とか息つく暇が取れる状態にまで落ち着き今は糖分を取るための時間。
「全く、上の考えはわかりませんよね」
「まあまあそう文句言わずに」
お茶を啜りながら小言を言うこの人はうちの部署唯一の新人、山田君。
彼は毎年この波に乗っている私たちとは違う全くの未経験者、言いたいことはよくわかる。しかしこの仕事量に見合ったボーナスが出るのだから文句は言いたくても言えないのが現状だ。
「あ、Aさん今日早上がりの日ですよね。ぼく達はもう大丈夫なんで上がっても大丈夫ですよ」
心の底から大丈夫ですと言いたげな彼に不安が残る中、無下にもできない優しさに甘え帰り支度をする。
何気に時計を確認すると長針がちょうど5時を指す。
8月に入って何度も逃したオトライブに漸く間に合うようになったことが、本当に仕事が終わりに向かっていると教えている。
「今帰りか？」
「兄者さん！」
玄関先で偶々出会ったこの人はさっき話したオトライブの主催者、弟者さんのお兄さん。
見ると兄者さんも帰るところのようで、家まで送ってくれるようだ。
車の中はいやに静かで、息をするのが少しだけ悪いような気がしそう。
「そういや今日弟者がオトライブやるって言ってたな。来るか？」
「いいんですか？！」
「あいつらが誘えってうるせえから、Aさえよければ俺は全然」
いつかは。って思ってたけど、叶う事は無いって思ってた。だから迷わず行くと答えた私を見て、兄者さんは顔を歪めた。
やっぱり嫌ですよね。
「キャッ」
……2(注意)軽い性的表現が含まれます。→←4……おついちさんside2
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作者名：nnanjokei | 作成日時：2018年4月4日 15時
