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ふと外を見ると、少し前まで晴天だった空が私の心のように鈍より天気に変わっている。
「理由も無しに帰るのだけ無しよ」
「……誰も帰るなんていってないじゃない」
外を見つめることで気持ちが落ち着いてきた私とは反対に、尚も言わない私に痺れを切らしおついちさんが不機嫌になってしまった。
だって、しょうがないじゃない。
「……もう少し、自分の事を考えてほしいって……思っただけなのよ」
「……うん?」
「とぼけないで」
想像通り、私たちを重い空気が包み込む。
「わかってる。なんて言いたくないし、変わってとも言いたくなかったから、言わなかったの。ごめんなさい、気持ちの切り替えが下手ね」
おついちさんの持っていたティーカップが鈍い音をたてる。その姿に、やってしまったと遅い自覚をした。
「あのさぁ、確かに俺はAよりお歳よ。それは認める。でもだからって好きな女に気を使われたくないの」
「うん」
「編集に、仕事に、撮影に……俺は楽しくてやってるの」
「……うん」
「……だから、そんな顔しないで俺のそばにいてよ」
久しぶりに聞いたおついちさんの本音。
お互いに泣きそうな、情けない顔をしていたと思う。
でも、そのちいさな本音が聞けたから、そんなことはどうでもよかった。
「……ココア、冷めるから」
溢れそうになった涙を隠すかのようにココアを進めるおついちさんに、一つしか用意されていないコップで一緒に飲もう、と誘う。
至極嬉しそうな顔でしょーがないなぁ!って、本当に嬉しそうにいうものだから。
愛しい感情が溢れ、考えよりも先に動くからだで抱きつき、その胸に自身の顔を埋めた。
〜fin〜
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作者名:nnanjokei | 作成日時:2018年4月4日 15時