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「寝られるときに寝た方がいいのよ。おついちさんは」
「……怒ってる?」
「いえ?」
怒ってないと言えば嘘にはなるけど、怒っている理由を口にしたところで関係が悪化する上に結果は差ほども変わらないから絶対に口にはしない。
そんな意地でも言わないスタンスをとっている私を、おついちさんは不服そうに見つめ、ヘッドホンなど編集道具を片し始めた。
「怒ってるのはわかるんだけどなぁ。怒ってる理由が皆無」
今度は解せぬ。と言いたげな声に心の底から思う。その姿が本当だったらどんなによかっただろうか、と。
おついちさんは、私を決して寂しい思いをさせないと、毎日のように私をおついちさん宅に招待してくれたり、弟者さん宅に招待してくれたりする。
確かに、撮影中のおついちさんに出会えるのも、編集中のおついちさんに出会えるのも、仕事終わりのスーツ姿のおついちさんに出会えるのも嬉しい。結局はどんなおついちさんでも、会えるだけで私は嬉しい。
でも頻繁に私がおついちさんの家に行く、または外で会うというおついちさんのパーソナルスペースを常に犯す、なんて状況は望んでない。
現に今のおついちさんがかなり無理をしているのがよく分かる。
「……そろそろ機嫌直してよ」
おついちさんの部屋から再びリビングへ。
私はソファーに体育座りで座り、おついちさんは台所で、空っぽになった私専用にと買ってくれたティーカップにココアをいれてくれている。
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作者名:nnanjokei | 作成日時:2018年4月4日 15時