２ J ページ7
取調室の中というのはどうも苦手だ。
何らかの事件を起こしたであろう犯人と一対一で対峙すること自体が気分の良いものではないが、
壁一面が不自然な白で覆いつくされていて、
椅子も机も、照明でさえも真っ白な空間で相手を尋問する。
まるで異物を飲み込んで自らの生涯を終える白血球のように、
この空間ごと消滅させられる錯覚すらしてしまうからだ。
俺は先程連行してきた容疑者が目を覚ましたという情報を耳にして、
他の捜査官によって始まった取調べを部屋の外から見ていた。
「潤、お疲れ」
「相葉さん、お疲れっす」
捜査一課の同じパイロットで一年先輩の相葉さんが俺の横に並ぶ。
「何か疲れてない？ 大丈夫？」
「ええ、まあ。 言ってた別件の方は片付いたんですか」
「大体ね。 相手の体がでかかったせいか、すぐ目覚ましたし。
元々小さい事件だから、捕まえちゃえば自白も早かったよ」
彼はすらりと長い手足を伸ばし、取調室の中の二人を見て言う。
「うわ、山本さんがやってんの。
かーわいそうに。 俺だったらあの人の取調べは受けたくないね、長いから」
「俺も出来れば受けたくないっすね」
「昔はあれが普通だったっていうんだから驚きだよね」
今の時代、著しい科学の進歩によって警察の捜査方法は随分と変わった。
それ故に形式的なものでしかなくなった取調べは、短時間で終わる場合がほとんどだ。
「それにしても、いつ見ても気分の良いもんじゃないっすね、あの光景は」
「ああ…聞いたよ、ゲート封鎖したんでしょ」
「はい、『箱』をまたいで騒ぎを起こされるのだけは避けたかったんで」
「賢明な判断だと思うよ、俺は」
あの時犯人は、下手をすればｂｏｘ３０へと逃げ込める位置にいた。
３０と３１の両方で騒ぎが広がれば、混乱するのは目に見えていた。
だからゲートを封鎖した。
頭では解っていても心は晴れない。
たった数分の間でも、誰かを閉じ込めているような気分になるから。
それはおそらく取調室にいる時のような、あの感覚。
それだけではない。
今の警察は、果たして在るべき姿なんだろうか。
「あんまり考えすぎないで、元気出して！」
相葉さんはそういって俺の肩を二回叩いた。
「はい、そうします」
夢を叶えてみてどうか。
俺はまだその答えを出せずにいる。
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←機械的正義 Ｊ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：凛南＊* | 作成日時：2017年5月30日 21時
