挨拶 ページ50
そんな状況に頭を抱えつつも、私は正直驚いた。
あれだけエンデヴァーを嫌っていたのにまさか本人の事務所に来るとは...
そんな私の考えを読み取ったのか、轟くんが、
｢クソ親父がNo.2と言われる事実を受け入れなきゃって思った。だからここにした｣
轟くんの目は真っ直ぐ前を見据えていた。もう以前の彼の雰囲気が消え失せていて、何だか安心した。
｢...入るか｣
｢うん。じゃ、手離してね？｣
そう言うと、轟くんは残念そうな顔をして手を離す。なんだその顔は。
そして、ついにエンデヴァーの事務所の中へ。
すると目の前には...
｢ようこそ。エンデヴァーヒーロー事務所へ｣
ズンッという効果音がつきそうなほど、堂々と立つエンデヴァーがいた。オールマイトとは違った威圧感。
｢初めまして。1年A組、万能 Aです。一週間よろしくお願いします｣
｢.........よろしく｣ ボソッ
ず、随分と溜めたな...しかも一言。
轟くんは不機嫌そうな顔をしながら小さく言った。
｢焦凍ォォ！挨拶ぐらいちゃんとやれ！！｣
エンデヴァー怖っ。そんで轟くんはあからさまに顔を歪めない！
...来るとこ間違えたかも。
｢おっとすまない。見苦しい姿を見せたな万能くん。君の活躍は体育祭で見たが素晴らしかった｣
｢
ピクッとエンデヴァーの片眉が上がる。
｢...君も中々挑発好きだな｣
｢よく言われます｣
いや、悪い癖だとは思ってるんだけどね？
なんでこういうときだけ口がまわるのかな私...
｢君を今回指名した理由はもちろん実力あってのものだが、君は"個性"に頼りすぎる節がある。
どうやら"個性"のリスクも高いようだしな。身体能力を向上させれば、今後優位になるだろう｣
｢...！ありがとうございます｣
流石と言うべきか、よく見ている。
私は身体能力は低い方ではないと思うが、大体の事は"個性"で補えるので体力をつけたりはほとんどやっていない。というか、面倒だというのが本音なのだが。
｢では、更衣室でコスチュームに着替えたらこちらに来い。そこで一週間の職場体験の内容を最初に説明する｣
｢はい｣
｢...おう｣
エンデヴァーは奥の部屋に入っていった。
｢じゃあ着替え終わったらここで｣
｢あぁ｣
私と轟くんはコスチュームを持ってそれぞれの更衣室へと入った。私は更衣室の扉を閉める。
｢...ふぅ。デク、今頃どうしてるかな？｣
私は大好きな彼の事を思いつつ、フードの中で静かに笑った。
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作者名：夢桜 | 作成日時：2019年3月20日 20時
