なりたい自分 ページ28
｢何のつもりだ。全力？クソ親父に金でも握らされたか？イラつくな...!｣
デクは轟くんの足が上がった瞬間、間合いを詰めた。
｢イメージ...電子レンジの...爆発、しない...しない！！｣
デクはブツブツと言いながら、右腕をかまえ、轟くんに一発いれた。
『モロだー！生々しいの入ったぁ！！』
｢かはっ...｣
轟くんは痛みに耐えながら、個性で攻撃を仕掛けた。しかし、心なしか氷も弱まっているように見える。
デクも、それに気づきながら応戦しようとしたが、全部の指が壊れていた為、指が握れないようだ。
｢SMASH！！｣
しかし、デクは親指を口のなかに突っ込んで安定させた。使った指は、遠目からでも赤黒さが濃くなっているのが分かった。
｢何でそこまで...｣
｢期待に、応えたいんだ...！笑って応えられるような...カッコいいヒーローに...
轟くんは目を見開く。
｢だから全力で！やってんだ、皆！君の境遇も君の決心も、僕なんかに計り知れるもんじゃない。でも、全力も出さないで一番になって完全否定なんて、ふざけるなって、今は思ってる！｣
｢うるせぇ......｣
轟くんは一体、何を考えているんだろう。
それは私には分からない。けど、
｢だから...僕が勝つ！君を超えて！！｣
デクは、救おうとしているんだ。過去に、父親に囚われ続ける彼を。
｢俺は、親父を......｣
｢君の！力じゃないか！！｣
轟くんの瞳が揺らいだ。
それと同時に炎が、会場に揺らめく。
『これは______！？』
｢勝ちてぇくせに......ちくしょう。敵に塩送るなんて、どっちがふざけてるって話だ。
俺だって、ヒーローに...！！｣
ああ、
｢デクは...本当に...本当に、ヒーローだ｣
轟くんの炎を見て、安心した私は小さく呟いた。
そして、そのまま口にしてしまいそうになる言葉を押し込むように、私は表情を殺し、唇を噛んだ。
これを今口にしたところで、結局私は、過去も、私の中に在るこの感情も、どうしようも出来ないんだ。
その姿を横目で見るかっちゃんは、静かにこぼした。
｢...クソムカつく｣ ボソッ
そんな中エンデヴァーが轟くんに向かって叫ぶ。けれど、彼には聞こえていないように見えた。
『エンデヴァーさん、急に激励...か？親バカなのね』
｢凄...｣
｢何笑ってんだよ。その怪我で、この状況でお前...イカれてるよ。どうなっても知らねぇぞ｣
両者が構え、全力を放つために駆け出す。
そして...
｢緑谷、ありがとな｣
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作者名：夢桜 | 作成日時：2019年3月20日 20時
