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『誰がオンマだ。同い年だわ。いつ産めるんだわ。タネはどこから、私の子は何の誰の子なの。あんた誰なの』
動揺を隠しつつ、いつもの調子で混ぜ返して、私は私の心の安定を保つ。
YG「ミン・ユンギって結構有名な名前で昔から通ってるんだけどなぁ…あーもう、ギターが見たい。普通に選ばせて。て言うかAがあっちに行って、俺のためのギター選んで端から並べて」
あっち、とギターがずらりと並ぶコーナーを指さされて、私もいい加減にふざけるのをやめて仕事モードに切り替えた。
『どんなのが欲しいの?ヒントください、お客様』
顎に指をおいて、トントンと叩きながら思案すると、ユンギはものすごく身体が重い日なのか、歩くのも億劫そうに私に近寄った。
それからほんと面倒くさそうにカウンターに腕を預けて、
YG「ノーヒントで持って来れたら、サービス料出してやるよ」
頬杖を突いて、私に、ふ、と笑って言った。
…色気がすごいな。
『はいはーい!少々お待ちを!ただいま、すぐに、お持ちしますので、こちらでおくろぎください!』
見とれたのは一瞬で、ぴょこんとカウンターから身を翻すと、背中にゲラゲラした笑い声を聞きながら、私はギターコーナーまで駆けて行った。
ユンギがこの店に来るようになったのは、練習生になってからすぐの頃だったと思う。
そう思えば知り合ってから、ずいぶん長い。
最初は本当に田舎からきた普通の男の子だったのに、石ころも磨けばこうも光るもんなんだと、感嘆するくらい、ユンギはきれいな男の人になった。
私はといえば、
相変わらずずっと、
学生で、
楽器屋の店員。
ユンギは練習生からアイドルになって、
今や世界をときめかせている。
時間の流れってこんなにも人を変えていくもんなんだ、とユンギを見るたび思っている。
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作者名:フネ55 | 作成日時:2022年11月30日 15時